「うちの子が友だちに自慢したり、相手を見下すような発言をして困っています」
「『私はできるのに、なんでできないの?』と友だちを責めることもあり、どうしたらいいのかわかりません。」
このような子どもの「マウント行動」に悩む保護者は少なくありません。
特に子どもは、年齢に関わらず自我が芽生えるとともに、他者との比較や自己主張が活発になりやすいものです。
マウント行動は単なる「わがまま」や「悪い態度」ではなく、成長過程で自然に見られる心の表れであることが多いです。
しかし、放置してしまうと友人関係のトラブルや自己肯定感の低下につながることもあるため、適切な対応が必要です。
この記事では、子どもがマウントを取る原因と、保護者が今日から実践できる具体的な対処法についてわかりやすく解説します。
こちらの記事では、子どもの具体的なマウント行動について心理士との対談をしていますので合わせてご覧ください。
なぜ子どもはマウントを取るの?考えられる5つの心理的背景
子どもにマウント行動が見られたときは、単なる「自慢」や「見下し」と片付けたり「そんなこと言っちゃダメでしょ!」と叱るのではなく、その裏にある気持ちや背景に目を向けることが大切です。
なぜなら、子どもは言葉では伝えきれない感情を、行動で示していることがよくあるからです。
自己肯定感を高めようとする心のサイン
子どもは成長する過程で「自分はどのくらいできるんだろう?」と考えるようになります。
周りと自分を比べることで自分の立ち位置を知りたがり、その結果、「自分のほうがすごい!」という発言をしたくなることももちろんあります。
マウント発言の裏にある子どもの本音
・「自分も頑張っていることを認めてほしい!」
・「本当は自信がなくいけど安心したい…」
マウント行動は、こうした自信のなさや不安感からくる自己防衛の一種であることが多いです。子どもに限らず、私たち大人にもみられる行動ですよね。
家庭内での会話や親の影響を受けやすい
子どもは、大人の何気ない言葉をよく覚えていますよね。
特に、大人がする比較や優劣を強調するような発言は、子どもの考え方に強く影響を与えていることを意識しましょう。
比較することが悪いわけではありません。比較をして「どちらがいいか」と”評価をする”ことがよくないのです。
避けたい言葉
こうした言葉を聞いた子どもは、「私はすごいんだ!〇〇ちゃんよりできるもん!」「△△くんって遅いよね!」というようにマウント行動をするようになる場合が多いです。
比較すること自体は問題ないのですが、評価をせず、その子自身を認める言葉かけをしましょう。
競争心や優越感が芽生えることが自然な成長段階
子どもは年齢が上がるにつれて、遊びや勉強の中で「勝ち負け」や「できる・できない」を意識し始めます。
よくあるマウント発言
これは健全な競争心の現れですが、勝つことや優れていることに執着しすぎるとマウント行動につながります。
競争心が芽生えることはいいことです。勝っても負けても「取り組むこと自体が大事」という価値観を伝えましょう。
愛情を求めるアピールとしての行動
忙しい日々の中で、子どもは「もっと親に見てほしい」「認めてもらいたい」という気持ちを強く持つことがあります。
特に、きょうだいがいる場合や、親がどうしても忙しくて構ってあげられないときに、愛情不足を埋めようとマウントを取ることがあります。
よく見られるサイン
これは、少し大袈裟にいうと、「誰かに自分を認めてほしい」という心のSOSの一つです。
自分を表現する方法がわからない
マウント行動は、自己主張の一つとして表れることもあります。
「私のほうができるもん!」
「私も頑張ったんだ!見てほしい!」
こうした発言は子どもらしい発言といえます。
ただ、「自分の気持ちや考えを伝えたい」けれどどう表現していいのかわからず、つい「上に立とう」とする言い方をしている場合には、深刻なマウント行動に繋がらないよう早めに対処できるとよいでしょう。
きょうだいの存在がマウント行動につながっているケース
「きょうだいが生まれてから、上の子のマウント行動がひどくなった気がする…。」
特にきょうだいがいる場合、上の子が外でマウント行動を取ることはよく見られる現象です。
「甘えたいのに甘えられない」「誰かに”すごい”って言ってほしい」というサインである場合が多いです。
これも、「ただのわがまま」や「性格の問題」ではなく、家庭内での立場や心の変化が影響していることが多いのです。
今まで自分が親の愛情を一心に受けていたのに、突然その半分以上が弟や妹に向けられる…。
家庭内での「自分の立場」が脅かされていると感じ、結果として、外で友だちに対して優位に立とうとする行動が現れます。
上の子は「いいお兄ちゃん・お姉ちゃん」でいなきゃと無意識に感じています。
上の子にとって、下の子の誕生は大きな環境の変化です。
どうしても下の子に手がかかることは仕方のないことですが、マウント発言を叱らず、「気持ち」を代弁してあげるようにしましょう。
例えば、「私は〇〇ちゃんよりできるんだよ!」となったときは「そんなこと言っちゃだめでしょ!」ではなく、「できたこと、すごくうれしいんだね。頑張ったもんね!」と気持ちに寄り添い、代弁する声掛けをしましょう。
難しいかもしれませんが、たまに上の子だけと過ごす「特別な時間」をつくったりして「私だけを見てくれる特別な時間」と感じられるようにすることも効果的です。
【具体的な対処法】保護者ができる5つの実践ステップ
「優越感」ではなく「達成感」を重視して伝える
マウントを取る子どもは、「誰かより上であること」で自信を得ようとしがちです。この考え方を、「自分自身の成長に目を向ける」方向に導きましょう。
他人と比較することよりも、自分の成長や努力に注目させることが大切です。
NGな声かけ:
「すごい!〇〇ちゃんより早いね!」
OKな声かけ:
- 「頑張ったね!自分でできてうれしかったでしょ?」
- 「前より上手になったのは、たくさん練習したからだね!」
マウント発言が出たときは「共感+導き」で対応する
子どもがマウントを取ったとき、頭ごなしに叱るのは逆効果。
まずは子どもの気持ちを受け止めた上で、相手の気持ちも考えさせましょう。
「自分の気持ち+相手の気持ち」を同時に考えさせることで、思いやりを育てましょう。
具体的な声かけ例
家庭で「優劣ではない楽しさ」を体験させる
日常の遊びや会話の中で、結果よりも「過程の楽しさ」や「協力の喜び」に目を向けさせましょう。
勝ち負けを超えた「一緒に楽しむ経験」がマウント癖を和らげます。
おすすめの遊びや取り組み
子どもの「承認欲求」を健全に満たす時間を作る
子どもは、親に認められることで安心し、過度なマウント行動を取らなくなります。
「あなたがいてくれるだけで大事な存在だよ」と伝えることが大切です。
実践ポイント
適切な「自己主張の仕方」を練習させる
子どもにとって、自分を表現することは大切なスキルです。
マウント行動を責めるのではなく、「どう言えば伝わるか」を一緒に考えてみましょう。
正直な気持ちは大事。でも、相手を傷つけない伝え方があることを教えましょう。
練習例
× 「私のほうができる!」
◎「私も頑張ったよ!一緒にやろう?」
× 「それ違うでしょ!」
◎「私はこう思うんだけど、〇〇ちゃんはどう?」
マウント行動は「成長のサイン」。焦らず見守ろう
子どものマウント行動は、
🌱 自分を知りたい
🌱 認められたい
🌱 他人との違いを確かめたい
という成長過程の一部です。
大切なのは、叱って抑え込むのではなく、子どもの気持ちを理解し、より良い自己表現へと導いてあげること。
子どもは「愛されている」「大事にされている」と実感できたときに、本来の優しさや思いやりを発揮します。
大人の一言で、子どもの心が安心で満たされるのです。
今日からできること
✔ 子どもとの「特別な時間」をつくる
✔ マウント発言が出たら「気持ち」を受け止める
✔ 「誰かよりできる」ではなく「あなた自身が素敵だよ」と伝える