発達障害の子どもは理解力がない?3つの原因と効果的な接し方を解説

「言っていることがなんで伝わらないの?」「理解力がないのは発達障害なのかな?」

そう感じたことはありませんか?

ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)を持つ子どもは、一般的な言葉の指示やルールの理解が難しいことがあります。

しかし、それは「理解力がない」のではなく、情報の処理方法が異なるだけです。

発達障害の子どもに適した伝え方を知ることで、親子のコミュニケーションのすれ違いを減らして子どもの特性への理解も深めることができます。

この記事では、発達障害の子どもが「理解できない」と思われる原因や特性、効果的な支援方法について詳しく解説します。

発達障害の子どもが「理解力がない」と誤解される主な原因は、認知特性の違いや感覚の過敏さによるものです。

具体的には、以下のASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の3つの要因が影響しています。               

以下の状態がある場合は発達障害の可能性を含めて専門家に相談してみるのもいいでしょう。

正式な診断の有無にかかわらず、日常生活の中でも学習においても子どもの困りごとに対応できる可能性があります。


✔ 抽象的な表現や比喩を理解するのが苦手
✔ 一度に多くの情報を処理するのが苦手
✔ 言葉の裏の意味を読み取るのが難しい(コミュニケーションが直線的)


✔ 一つのことに集中するのが苦手(注意が散漫)
✔ 興味のないことには注意が向かない
✔ すぐに気が散り、話の途中で別のことを考えてしまう


✔ 周囲の音や光に気を取られて話が入ってこない
✔ 触覚過敏で着ている服が気になり、話に集中できない
✔ 聞こえているのに、処理するのに時間がかかる

発達障害の子どもたちは、情報の受け取り方や処理の仕方が違うだけであり、決して理解力や能力がないわけではありません。

むしろ、好きなことに対しては驚くほどの集中力や記憶力を発揮することもありますし、工夫をすることで学習の効率も高まります。

ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは…    

✔ 論理的思考が得意 → ルールが明確なことは理解しやすい
✔ 得意分野には驚異的な集中力 → 興味のある分野では知識が豊富

ADHD(注意欠如・多動症)の子どもは…

✔ 直感的な判断力が高い → 瞬時にアイデアを出すのが得意
✔ 創造性が豊か → 想像力が高く新しい視点を持っている

発達障害の子どもが「理解力がない」と見なされることは、決して珍しくありません。

情報の受け取り方や処理の仕方が一般的な子どもと違うため、彼らに合った方法で伝えなければ、適切に理解できないのは当然のことですよね。

「伝わらない」と感じたら、「伝え方」を変えるようにしましょう。

以下では、日常生活の中で保護者ができる関わり方をご紹介します。


発達障害のある子どもは、耳で聞いた情報を処理するのが苦手な場合があります。特に、継時処理(情報を順序立てて理解する力)が弱いと、言葉だけでは流れを把握しづらくなります。

言葉だけで伝えるのではなく、視覚的なサポートを取り入れることで理解しやすくなります。

例えば、朝の準備の流れをイラストや写真で示し、『着替え→朝ごはん→歯みがき→出発』と一目でわかるようにすると、子どもが次に何をするべきかが視覚的にわかりやすくなり混乱が減るでしょう。


発達障害の特性によっては、言葉の意味をそのまま受け取る傾向があるため、あいまいな表現が理解することが苦手な場合があります。

例えば、『おもちゃを片付けてね』と言われても、どのように片付けるのか、具体的な指示がないと動けないこともあります。

その場合、『ブロックをこの箱に入れてね』と、何をすればいいのか動作を具体的に伝えることで子どもが行動しやすくなります。


発達障害の子どもにとって、「曖昧な指示」や「なんとなくのルール」では、何をすべきかわかりにくいことがあります。

例えば、「きちんとしなさい」「静かにしなさい」という指示では、どのように何を行動すればよいのかが伝わりにくく、子どもが混乱してしまうこともあります。

「なんとなくこうしてほしい」ではなく、「食事中は用もないのに立ち歩かない」「学校の宿題は帰宅後1時間以内ににやる」など日常生活の中で具体的なルールを決めると良いでしょう。

また、ルールが毎回変わると混乱してしまうため、できるだけ一定のルールを維持する(一貫性を持たせる)ことも必要です。


発達障害の子どもは、新しいルールや指示をすぐに理解できないことがあります。

焦って一度にたくさんのことを伝えてしまうと、処理しきれずにパニックになってしまうこともあります。

また、注意力が散漫になりやすい子どもや、情報処理に時間がかかる子どもにとって、ゆっくり丁寧に説明することが重要です。

「何度言ったらわかるの!」となってしまうかもしれませんが、子どもが一度に全てを理解できなくても、大人側が焦らず繰り返し伝えることで定着しやすくなります。

もちろん一度伝えたからといって、すぐに覚えられるわけではないですよね。根気強くやっていきましょう。

なお、感覚過敏がある子どもの場合は、周囲の刺激が多いと指示の言葉が入ってこないこともあるので、静かな状況や1対1の状況で話すと理解しやすります。


「どうしてできないの?」ではなく、「できたこと」に目を向けましょう。

発達障害のある子どもは、日常生活の中で「指示通りに動けない」「約束を忘れる」「途中で集中が切れる」といったことが多く、「できなかったこと」にばかり注目されがちです。

子ども自身も、お友だちと比較してしまい、できないことや苦手なことに目を向けてしまっていることも少なくありません。

しかし、そうした否定的な言葉や状況が続くと、子どもは「どうせ自分はできない」と思い込み、やる気を失ってしまいます。

たとえ小さなことでも「できた!」という達成感を得ることで、自己肯定感が育ち、「もっとやってみよう」という気持ちにつながります。

この時のポイントは、「おもちゃを片付けたね!」など何を頑張ったのかを明確に伝えること、そしてできるだけ、できたことをすぐに言葉にすることです。

そうすることで、子ども自身が、「完璧にできること」よりも「やろうとしたこと」にも価値を置くことができるようになります。

正直なところ、大人としては根気も要りますし、感情的になってしまうこともありますよね。

発達障害の子どもにとって、「ルールの理解」や「行動の定着」には時間と工夫が必要です。

親も子も、毎日少しずつでいいので取り組むことができるといいですね。


状態や症状にはもちろん個人差があります。

日常生活において重要な指示を聞けない(例:車の前に飛び出す、火遊びをする)など、子どもの安全や健康に悪影響を及ぼすような状態や症状が深刻な場合は、早期に専門家に相談するようにしましょう。

相談機関や病院、正式な診断に抵抗のある方もいると思いますが、子どもの困りごとに対して何ができるかを検討するうえで参考になるでしょう。

発達障害の子どもたちには、彼らが「理解しやすい言葉や方法」で伝えないと伝わらないのです。

子どもに「もっとちゃんと聞きなさい」と求めるのではなく、大人が「どうすれば伝わるのか」をまず考えられるといいですね。

発達障害の子どもは、正しい環境と支援があれば、驚くほどの成長を見せることがあります。

将来、社会に出て仕事をする時に、子ども本人が「この点が苦手なのでこうしてください」と周囲に伝えられることも本人の人生に必要な場合もあります。

「普通」に合わせようとするのではなく、その子にとって「理解しやすい環境」を作ることが、困りごとを減らし可能性を発揮するための最良のサポートなのです。

参考文献