子どもが社会に出たときに、自分自身で考えて、自分で決めて、そしてその決定に責任を持って行動していくことは非常に重要ですよね。
こうした自己決定の力、つまり子どもたちの「自主性」と「主体性」を、どのように育んでいけばいいのでしょうか。
この2つの能力を早期から育むことで、子どもたちはより豊かな社会生活を送り、学業や将来のキャリアにおいても大きな成功を収める可能性が高まるとされています。
本記事では、この2つの能力を育むことの効果や、日々の小さな瞬間の中で子どもたちのこれらの心を育むための実践的なアドバイスもご紹介します。
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自主性とは何か
自主性とは、人が外部からの圧力や指示に左右されず、自らの意思で行動や選択をする能力を指します。
自主性が高い人は、他人からの具体的な命令や指示がなくても、自分で考え、行動を決定し、実行に移すことができます。
例えば、子どもが自分で宿題のスケジュールを立て、親に促される前に宿題を始めたり、遊んだ後、親に言われる前に自分でおもちゃや学用品を片付けること。
また、起床時間になって親が起こす前に自分でアラームをセットし、時間になったら自立して起床したり、就寝時間を自分で守る、などの行動は自主性が高いといえます。
主体性とは何か
主体性は、自己の行動や選択において主導権を持ち、自己責任を伴う行動をとる能力を指します。
「主導権」とか「責任」というところに注目すると、自主性よりもステップアップした力、という印象ですよね。
主体的な人は、自分の行動や決断がもたらす結果に対して責任を持ち、自分の信念や価値観の表れの一つとして行動します。
また、主体性には自己実現の側面も含まれ、自分自身の内面的な動機や欲求に基づいて行動を起こすという特徴があります。
例えば、クラスの活動で何か新しいアイデアやゲームを提案し、それをクラスメートや先生と共有すること。
また、友達との間にトラブルが生じた時、親や先生に頼る前に自分で解決しようとすること、言葉でうまく気持ちを伝えたり、公平な解決策を考えたりすることなどです。
自主性と主体性の違い
この2つの能力は、ともに子どもたちの成長や発達において重要な力ですが、意味には絶妙な違いがあります。
ここで、自主性と主体性の違いを明確にしておきましょう。
自主性が「他者から独立して行動する能力」に焦点を当てているのに対し、主体性は「自己の内面から湧き出る動機や責任感に基づいて行動する能力」という点に焦点を置いていることです。
つまり、自主性は「誰かに言われなくても行動できる」ことに関連し、主体性は「その行動が自分自身の内面的な意志や価値観から生じている」という深い意志の表れです。
もっと簡単にいうと、自主性が「できる」という外部的な自立、主体性が、より内面的な成長(自己理解や自己実現)を目指したもの、という感じです。
この2つの要素は互いに関連していて、自主性が高まることで主体的な行動が取りやすくなり、その逆もまた真です。
「自律」とは違うの?
なお、「自律」という言葉もありますが、この概念は、人が内面の規範や価値観に基づいて行動を決定し、自分自身の感情や行動をコントロールする能力を意味するので自主性と主体性に似ています。
ただ、「自律」は、自己管理とか自己制御の要素がより強く含まれている点が自主性や主体性と異なると言えるでしょう。
「リーダーシップ」とは違うの?
また、主体性についてはリーダーシップに近い印象を持たれた方もいるかもしれませんが、主体性は、内面的な動機や自己実現に重点を置いており、他者を導くというよりは、自分自身の人生や状況において能動的な役割を果たすことを意味するので、リーダーシップとも少し異なります。
主体性を持つ人が必ずしもリーダーシップを発揮するわけではないですが、優れたリーダーは高い主体性を持つ傾向があります。
このため、主体性はリーダーシップの発展において重要な基盤となることもあります。
こちらの記事で詳しく解説しています。
リーダーシップについては自主性と主体性を育む必要性
自主性や主体性が育まれないと、日常や学校生活でどのような状況が想定されるか、ご紹介します。
自分で何かを決めるのではなく、常に親や学校の先生、友だちに決めてもらうよう求めます。自分で選択をすることに不安を感じ、他人の意見に頼りがちになってしまいます。
また、面倒なことや困難な問題に直面した際、自ら解決策を見つけ出そうとするのではなく、すぐにあきらめたり、他人に助けを求めたりします。
常に誰かの指示がないと動けなかったり、自分から何かを提案することを恐れます。
自分の意見や感情を表現することが苦手で、自己主張をする必要がある場面でも、自分の考えを人に伝えることを避け、コミュニケーションに消極的になってしまいます。
こうした行動につながらないよう、自主性と主体性を子どもの頃から育む必要があります。
自主性と主体性の効果(将来への影響)
研究によれば、自主性と主体性は、子どもたちにとって長期的に見てもさまざまないい影響を及ぼすことがわかっています。
自主性の育成と学業成績
これは想像しやすいと思うのですが、自主性が高い子どもたちは、学業においても高い成績を収める傾向にあります。自分で学習目標を設定し、それに向かって自律的に努力を続けることができるからです(Frontiers in Psychology)。
さらにここに主体性が加わると、自分自身の好奇心や興味関心、価値観に基づいて学習を深めて広げていけます。そうすると、単純な知識の習得だけでなく、学ぶこと自体を楽しむことができるようにもなります。
主体性と社会的スキル
主体性のある子どもたちは、周りの人との関係を築く上で効果的なコミュニケーション能力を持ち、また困難な状況でも自分の感情を適切に管理する能力が高まります。これにより、社会的な相互作用がスムーズに行われるようになります(Academic OUP)。
自主性と主体性が高い大人が社会的にも成功しているという研究もあります:
例えば、子どもたちの自主性と心理的な幸福感との関連を調査した研究では、自主性が高い人はより高い心理的幸福感を持ち、これが成功への道を形作ることがわかっています。
自主性は、雇用、社会的利益など、大人になってからの環境においても、とても重要な役割を果たします。
さらに、自主性が高い人は生活の満足度も高いと報告されています。この研究は、安全性、友情、健康、経済的安全、余暇、尊重といった基本的な機能が人々の生活満足度に及ぼす影響を調べ、自主性がそれらのポジティブな効果をさらに強めることを示しました。
これらの研究は、自立し、自分の価値観に基づいて行動する能力が、職場での成功や個人の幸福感に直接的に関連していることを強調しています。
このように、自主性と主体性を育むことは子どもの発達や将来のために大きなメリットをもたらしそうですね。
自主性と主体性を育むための方法
自主性と主体性の重要性がご理解いただけたところで、子どもたちが自主性と主体性を育めるようになるにはどのようなアプローチがあるのでしょうか。
具体的な方法を以下に示します。日常生活の中で簡単に取り入れることができる実践的なアプローチです:
選択の機会を提供する
日常生活で、何を着るか、何を食べるかなど、小さな選択から始めて子どもに決定させます。選択肢を提供することで、子どもは自分の好みや意見を表現する機会を得ます。
例えば、食事の選択。朝食で何を食べるか、または週末のメニューに何を加えるか子どもに選ばせます。小さな選択でも、自分の意志を表現する機会を与えることが大切です。
また、学校に着ていく服や外出時の服装を子どもに選ばせることで、その日の気分や好みに応じて自分で決定する力を養います。
子どもは、自分で選ぶことに興味を持ち、楽しみを感じることが多いので、子どもがいうことを聞かなかったりする場合にも大変有効です。
子どもが選んだことはできるだけ尊重することもポイントです。
問題解決の機会を作る
子どもが直面する問題や疑問に対して、すぐに答えを与えずに、「どう思う?」や「どうするといいと思う?」と問いかけることで、自ら考える力を育てます。
例えば、玩具の整理です。おもちゃが散らかった時に、「どうやって片付けるといいかな?」と尋ねて、子ども自身に整理の方法を考えさせます。
また、宿題の計画を立てる際、どの科目をいつやるか、やりたい遊びとの調整をどうつけるかなど、スケジューリングを子ども自身にさせることで、自己管理能力を育てます。
家庭内での責任を持たせる
年齢に応じた家庭内の役割を持たせることで、責任感を養います。
例えば、ペットの世話です。餌やりや散歩のスケジュールを子どもに任せ、それに対する責任感を持たせます。他にも、家庭内や庭の植物の水やりを定期的な任務として子どもに割り当て、生き物の世話が日常の一部となるよう導きます。
自分自身で選んだり、考えた上で決めていくプロセスの中で、行動に対する責任や自分の選択だという自覚も生まれ、意思決定能力や判断力を身につけることにもつながります。
子どもが自主性と主体性を身につけるこのようなプロセスでは、保護者は必要なサポートをしつつ、子ども自身に考えさせ、行動させる機会を積極的に作ることが求められます。
こうした活動を通して、子どもたちは自立し、社会で活躍するための基盤を築いていきます。
おわりに
私たち大人でさえも、自主性や主体性が十分でないこともあるでしょう。
自主性と主体性を育てることは、単に子どもが自分のことを自分でできるようになる、ということ以上の意味を持ちます。それは、子どもたちが社会の中で自分の役割を理解し、積極的にその役割を果たしていく力を培うということです。
今回ご紹介した方法を日常生活に取り入れ、子どもが自ら学び、考え、行動する機会を増やしてください。
子どもはどんな状況でも自分自身で考え、適切な判断ができるようになります。大人としてできることは、その過程を温かく、そして確実にサポートすることです。
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