ギフテッドの子どもの母子分離不安|不登校になる場合と支援の考え方を解説

「小学校の門の前で、なかなか親から離れられない」
「このまま不登校になってしまうのでは?」
こうした場面に何度も向き合ってこられた経験がある方は少なくないかもしれません。
親などの養育者から離れることへ不安を抱くこと(分離不安)は、本来、子どもの愛着形成のなかで誰にでも見られる発達現象のひとつです。
ただ、ギフテッドのお子さんの場合は、想像力の豊かさや感情の深さといった特性が重なり、その表れ方が強く、また長く続くこともあります。
この記事では、その背景を発達心理学やギフテッド教育の視点から整理しながら、ご家庭で今日から始められる関わり方を含めてご紹介していきます。
不登校になる場合や、専門家に相談するべき状態なども解説しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。

「うちの子、ギフテッドかも」と感じている方へ。
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母子分離不安とは
「母子分離不安」とは、子どもが養育者(母親に限らず子どもにとって愛着のある人)から離れる状況に対し、強い不安を感じることです。
特に、小学校低学年のお子さんには、以下のような特徴が見られます。
出典:「学校に行きたくない」母子分離不安の子どもにやってはいけないこと【小学生編】
医学的には、症状が1ヶ月以上続き、生活に支障をきたしているときに、「分離不安症」と診断されます。
自分の子だけが膝の上から動かなかったり、学校への送迎の時間、毎日のように涙する我が子を見ると、もしかして分離不安?と思う方もいらっしゃるでしょう。
保護者としては、学校に無理やり連れていくことへ罪悪感を抱いたり、「いつまで続くんだろう」と不安になることもありますよね。
分離不安は、子どもが「この人といると安全だ」と感じている証拠でもあります。
心理学では、安定した愛着関係が形成されているからこそ、離れることへの不安が生まれるとされています。
子どもの「離れたくない」は、お母さん(または主たる養育者)を深く信頼しているサインでもあります。
信頼できる存在として認識されているからこそ、不安が反応として外に出てくるのです。
ギフテッドの子に多い原因
ギフテッドの子の場合は、定型発達の子に見られる分離不安よりも強く、長く続くことがあります。
以下で、その背景を一緒に見ていきましょう。
なぜギフテッドの子は離れにくいのか
「悪いこと」も想像できる
ギフテッドの子は、年齢に対して想像力が高度に発達していることが多くあります。不安に関してもこの想像力が働きます。
「お母さんがいない間に、お母さんが事故にあったら」「自分が学校で困ったときに助けてもらえなかったら」「もしかしたら今日が最後かも」
こんなシナリオを、リアルに描けてしまうのです。頭の中の世界が豊かなだけに、その世界の中で起きる「最悪の出来事」の可能性も想像できてしまいます。
離れることが感情を増幅させる
ギフテッドの子は、感情を人より深く、長く感じる特性を持つ場合が多いです。同じ「お母さんと離れる」場面でも、本人の中では何倍もの強さで悲しみや不安が押し寄せます。
数分で気持ちを切り替えられる場面でも、ギフテッドの子は1時間、半日、その日一日中、その感情を引きずることもあるかもしれません。
共感性の高さも影響する
ギフテッドの子は、他者の感情にも敏感です。お母さんが「行ってきます」と笑顔で言っていても、その奥にある慌ただしさや疲れを瞬時に感じ取り、「お母さんも本当はつらいんだ」と察して離れにくくなる場合もあります。
大人でも気づかないような微細なサインを、ギフテッドの子は無意識に拾い上げています。「大丈夫だよ」と言葉で伝えても、表情と一致していないと、子どもの中で警報が鳴り続けてしまうのです。
知性は高くても心はまだ子ども
ギフテッドの子の特徴として知られている「非同期発達」は、知能の発達が情緒や身体の発達よりも先行する状態のことです。
「5歳なのに好きなことだと大人とも議論できる」「小学校低学年で哲学的な深い問いを投げかける」などの一方で、感情のコントロールは年齢相応か、それよりも幼いことが珍しくありません。
知的に高度な分析ができるからこそ、「離れるとはどういうことか」「自分の不安の正体は何か」を考えてしまう。けれど、その不安を扱う情緒的な力はまだ追いついていない。
このようなギャップが、分離不安として表面化することがあります。
環境に敏感
ギフテッドの子は、感覚過敏(音、光、肌触り、においなど)を併せ持っていることも珍しくありません。
本人が意識していない刺激もたくさんあります。それが特に小学生になったタイミングや新学期など、変化のある時期だと、環境の変化に対する拒否感が大きくなり、「行きたくない」という表現につながりやすくなります。
本当に苦痛な場合もあるため、具体的に何が嫌なのか、どんなことに疲れるのかじっくり聞いてみてあげてください。
もし、学校でも環境調整ができるようなことであれば、一度学校の先生に相談してみるのもおすすめです。
不登校につながる可能性
母子分離不安が長引いた末に、不登校につながる可能性が気になる方もいるでしょう。
ギフテッド児の学校不適応リスクを整理したNeihart(1999)の研究では、ギフテッドの子の登校拒否は、怠けや逃避というより、「この水準の刺激では生きていけない」という能動的な拒絶として表れることがわかっています。
学校が合わないのではなく、学校という環境とその子の特性が噛み合わないことが原因です。
具体的には、会話のテンポが合わなかったり、集団の同質性に違和感を感じたり、そうした状況によるストレスが日々積み重なって、ある日「もうこの場所には入れない」と止まってしまう場合です。
分離不安と不登校は、「今までの環境や自分の世界と違う場所に入っていく難しさ」が、表面化したものだという視点も持てると良いでしょう。
そのため、無理に学校に戻したりするのではなく、「その子に合う場所をどう設計するか」を考えてみてください。
学校に2時間しか過ごせない日が続いてもいいですし、図書館や保健室で過ごしてもいい。最初は好きな科目だけ参加したり、給食の時間だけ参加してみるなど、学校に行くことを「親から離れる不安な時間」ではなく「楽しい時間」という考え方に変えることから始めてみましょう。
学習のことが心配であれば、オンライン学習などを活用したり、地域のフリースクールに居場所を分散させていくのも選択肢です。
分離不安は母親に限らない
母子分離不安というと「お母さんに対して」と思われがちですが、ギフテッドの子の場合、必ずしも母親だけに執着しているわけではありません。
「いちばん安心できる人」「自分の機微を一番分かってくれる人」と感じている相手から離れることが難しい、というのが実態に近いです。
お父さんが主たる養育者の場合は、お父さんから離れにくくなります。
祖父母や保育士の中に、その子にとっての「安全基地」になっている人がいる場合もあります。
「誰が」というよりも「どんな関係性か」を見ることが、大切になります。
学校生活の反動
学校や園で「いい子」「大人びている」とみられている子ほど、家ではくっつき度が増すこともあります。時には癇癪やわがままが伴うこともあります。
これは「過剰適応」と呼ばれる現象で、外の世界で頑張りすぎたエネルギーの揺り戻しが、家庭で出ているのです。
外で見せている顔は氷山の一角。お母さんの腕の中でしか取り戻せない「素の自分」があるからこそ、離れたくないのケースもあります。
母子分離不安はいつまで続く?
分離不安による激しい感情の表れは、小学校入学のように、それまで家庭で長く一緒に過ごしてきたお母さんから一気に離れるタイミングで、特に強く出やすいことが知られています。
これは大きな環境変化に対して身体と心が一気に「変わったぞ」と驚いている状態です。
そして、「一緒にいてくれる人」がお母さんだけでなく、クラスのお友だち、担任の先生、習い事の先生……と少しずつ広がっていくにつれて、不安が自然と落ち着いていくケースも少なくありません。
新しい「安心できる人」を一人ずつ獲得していく、その途中の状態なのだと捉えてみてください。
以下の記事では「ひとりでいられる能力」について専門家が解説していますので、ぜひ合わせて読んでみてください。
専門家への相談を考えたいサイン
分離不安は、基本的に時間の経過と経験の広がりとともに減っていく場合が多いですが、いくつか気をつけたいサインを挙げておきます。
このいずれかに当てはまる場合は、分離不安以外にもお子さんの状態に影響している理由があるかもしれません。
家庭だけで抱え込まず、児童精神科や臨床心理士、子育て相談窓口に早めに相談してみてくださいね。
家庭でできる7つの支援
ここからは、家庭で今日から始められる関わり方をご紹介します。
すべてを完璧にやろうとせず、ピンと来たものを1つだけ選んでみてくださいね。
① 子どもの不安を言葉にする
「離れたくない」の中身を、一緒に言葉にしてみましょう。
「どこが心配?」「お母さんがいない間に、何が起きそうな気がするの?」
興味を持って聞いてみましょう。
ギフテッドの子は、自分の感情を言葉にするのが意外と苦手なことがあります。
一緒に言語化していくことで、その子の感情調整力も育てられますし、不安を客観して見ると「意外に大丈夫そうだ」と気づくこともあります。
その気持ちをどうにかする必要はないので、まずは気持ちに寄り添えると良いでしょう。
② 「いつ会えるか」を具体化する
「ママすぐ帰ってくるからね」では、ギフテッドの子の論理的な脳はあまり納得しません。
「すぐとは何分?」と心の中で聞いているのです。特に、ASD傾向のある2E(ギフテッド×発達障害)のお子さんはより厳密に時間軸を考えます。
「3時の長い針が下に来たら、お迎えに行くよ」「今日は給食を食べて、昼寝して、おやつを食べたら帰る時間だよ」など、具体的な時間軸を示してみてください。見通しが立つと、不安はぐっと減ります。
なお、年齢が幼いうちは、一日のスケジュール表を一緒に作るのも効果的です。
朝の出発前に「ここがいまね、ここでお迎えだよ」と指でなぞるだけで、頭の中の不安な空白を視覚的な情報に置き換えて理解し、安心することができます。
③ 別れの儀式やおまもりを決める
毎朝別れるときには、決まった「儀式」を作ってみましょう。
ハイタッチ、ぎゅっとハグをする、好きな合言葉、2秒間笑顔で見つめ合うなど、少し楽しくてお子さんが喜ぶ儀式がいいでしょう。
子どもの脳に「これが終わったら、次は再会だ」という回路を作り、安心を与えてくれます。毎日同じ儀式のほうが、不安は静まりやすくなるでしょう。
また、ポケットなどに忍ばせられる「おまもり」も効果的です。
「困ったらこれを握ってね。お母さんもおうちで、同じハンカチを握ってるからね」と伝えるなど、子どもの想像力を安心の側に向けるためのスイッチとして活用してみましょう。
こうした安心するための行動はコーピングスキルと言います。こちらの記事で詳しく紹介しているので合わせて読んでみてください。
④ 親も不安がらない
ギフテッドの子は、親の感情を敏感に察知します。
「今日も泣くかな」「離れられるかな」と、親が朝から緊張していると、その緊張感が子どもに伝わって不安を増幅させてしまうことも。
もちろん完璧に隠す必要はありませんが、別れの瞬間だけは、こちらが軽やかでいる。
「行ってきまーす」と、いつもと同じテンションで送り出す。
離れることが重大事とならないような空気を、こちら側から作ってあげましょう。
お母さん自身の気持ちも大切に
ギフテッドの子の母子分離不安は、お母さんも一緒に消耗しストレスも溜まりますよね。
「今日も離れられなかった」「他のお母さんはこんなに大変じゃなさそうなのになんで?」と自分を責めてしまう瞬間もあるかもしれません。
子どもが「離れたくない」と感じているのは、深く愛着を結べる関係を作ったからです。
丁寧に育ててきた成果だという視点を持ち、もし可能なら、自分のための「離れる時間」もぜひ意識的に作ってみてください。
15分でいい、近所のカフェでコーヒーを飲む、本を読む、誰かに話を聞いてもらうなど、お母さん自身も回復する時間も大切にしてください。
まとめ|母子分離不安は成長のサイン
ギフテッドの子の母子分離不安は、想像力の豊かさ・情緒の深さ・非同期発達といった、その子の特性に根ざしているものだとわかっていただけたかと思います。
「治す」「克服する」という発想ではなく、「その子なりの離れ方」を一緒に育てていく、という視点で、ぜひ関わってみてください。
本記事の内容は、Gifted Gaze が国内外の発達心理学・愛着研究・ギフテッド教育の知見をもとに、独自に整理したものです。あくまで一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療、医療的助言に代わるものではありません。お子さまの分離不安や登校渋りが日常生活に大きな影響を与えている場合、また保護者の方ご自身が強い負担を感じておられる場合には、児童精神科、小児心療内科、臨床心理士、スクールカウンセラー、地域の子育て支援窓口など、信頼できる専門機関にご相談を検討してください。記事の内容は執筆時点での知見にもとづくもので、すべてのご家庭・お子さまにそのまま当てはまるわけではないことを、ご了承ください。
参考文献
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- Columbus Group (1991) Unpublished transcript of the meeting of the Columbus Group, Columbus, Ohio.
- Neihart, M. (1999) The impact of giftedness on psychological well-being: What does the empirical literature say? Roeper Review, 22(1), 10–17.
- Peterson, J. S. (2009) Myth 17: Gifted and talented individuals do not have unique social and emotional needs. Gifted Child Quarterly, 53(4), 280–282.
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- Ainsworth, M. D. S., Blehar, M. C., Waters, E., & Wall, S. (1978) Patterns of Attachment: A Psychological Study of the Strange Situation. Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum.
- 石津憲一郎・安保英勇 (2008) 中学生の過剰適応傾向と学校適応感とスクールモラールとの関連. 心理学研究, 79(4), 360–367.
- 松村暢隆 (2021) 『才能教育・2E教育概論——ギフテッドの発達多様性を活かす』東信堂.
- 文部科学省 (2022) 「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議 ポイント整理」.

