子どもが嫌がることをやらせたり、やりたがるることを制止したりすることは、親としても気持ちの良いことではありません。
そこには大小さまざまな、親と子どもの気持ちのぶつかり合いが生まれますので、親の方にも色々な気持ちが生まれ、苦しい気持ちになることもあります。
筆者は、子育て支援をしていると、そういう悩みや不安も含めて、しつけに関する相談をいただくことも少なくありません。
そこでこの記事では、いくつかの相談内容をあげた上で、どのように考えてどう対応していくのかについて提示させていただきます。ぜひ参考にしてもらいたいと思います。
なお、この場で紹介させていただく質問に関しては、私が現場でよくお聞きするものをまとめて再構成したもので、どなたか特定の方からいただいたものではありません。
しつけに関する第一回の記事では基本的なことをお伝えしましたので、この記事では第二回として、具体的なお悩みにお答えする形で解説していきたいと思います。
この記事を書いた専門家

杉野 亮介 すぎの りょうすけ
公認心理師・臨床心理士
教育支援センター、スクールカウンセラーとして不登校支援などに携わり、児童福祉施設で心理士として20年間以上従事。発達障害児の心理的支援などを行う。
この記事でわかること
- 子どものしつけに関する具体的なお悩みへの対応法
- お手伝いをしない子どもへの考え方と接し方
- 食べ物の好き嫌いとの向き合い方
- 買い物での「欲しい」への対処と我慢の捉え方
しつけについてのQ&A
質問1:お手伝いをしたがらない子どもについて
子どものお手伝いに関しては、相談をいただくことはけっこう多いように思います。これは、各家庭、保護者の方それぞれの価値観によるとは思うのですが、私自身は「無理にお手伝いをする必要はない」「子どもは遊ぶことが仕事」と思っているところがあるため、「お手伝い、しなくても良いんじゃないですか?」とお伝えすることもあります。
親子それぞれがすべきこととして、親は仕事(もちろん、家事も育児も含みます)、子どもは学び(勉強も遊びも学びです)があげられます。子どもが学びの一環として、お手伝いをしたいというのであれば是非やらせてあげてください。しかし、子どもが手伝うのが当たり前、それがないと家事が回らないと、少し考えた方が良いかもしれません。そこの、親子の境界線は明確にしておいた方が良いと言えます。
子育て相談をしていると、たまに、家でお手伝いばかりしている「良い子」に出会うことがあります。親の顔色を見たり、家の状況を見て、何をすべきかを察知して動いたりしています。学校でも大きな問題はないのですが、学年が上がるにつれて、「休み時間に一人でボーとしている」「自分の意見を持てない」ことなどを先生方が心配されて、相談の場にやってきます。こういう子どもたちを見ていると、お手伝いをする子が偉い、お手伝いをしない子はダメ、とは一概に言えないと思うのです。
もちろん、絶対にお手伝いをしてはいけないということではなく、子どもがやりたいというのであれば、是非やらせてあげて欲しいし、やりたくないと言うなら無理にやらせなくても良いと思います。子どもにとって、お手伝いが「やりたい」ことなのか、「やりたくないことなのか」ということが、非常に大切なことです。「やりたい」ことであればどんどんやってくれますし、「やりたくない」ことであればなかなかやってくれないし、やったとしても適当にやったりして叱られたりしていますね。
では、お手伝いをしたい子どもは、なぜそう思うのでしょうか。それは言いかえると、子どもにお手伝いをして欲しいと思う親は、どうしたら良いのでしょうか。子どもの行動の多くは親が見本になっているということを考えてみれば、答えは比較的簡単に出ると思います。つまり、子どもは家事をしている親の様子を見て、それが楽しいことなのか、楽しくないことなのかを学んでいると言えます。
親が家事をしている際に、イライラしている、嫌々している態度が見える、「なんで私がこんなことをしないといけないの」とブツブツ言いながらやっている、等の様子を見ると、子どもはどう思うでしょうか。あれは嫌なことだな、きっとしんどいに違いない、自分はしたくないと思うでしょう。一方で、親が楽しそうに料理を作っている、笑顔で掃除機をかけている、大人同士で楽しそうに話をしながら洗濯物を干している、等の様子を見ると、子どもは「楽しそう」「自分もやりたい」「大人だけずるい」と思います。
時々、何か悪いことをしたり、ルール違反をした時に罰として「お手伝い」が科せられる家庭があります。親子で話し合った上での約束であれば、絶対にいけないとは思いませんが、少なくとも、その家庭では「家事、お手伝いは嫌なこと」になっていくのだと思います。
もし、ご自分のご家庭の方針として、子どもにもお手伝いをさせたいと思われるのであれば、それを子ども達にきちんと伝えてあげることも必要です。親が何も言わずに「うちの子は、全く手伝いをしない」と思われている方も多いのではないでしょうか。親として、なぜ子どもにお手伝いをして欲しいのか、それは子どもにとってどんな得(メリット)があるのか、を伝えた上で、子どもがどう行動するのかということが大切です。
一方子ども側の意見では、「子どもがお手伝いをしない」とおっしゃる保護者の方の子どもに話を聞いてみると「何をして良いのかわからない」という声が多いですね。お手伝いと一言で言っても、各家庭で状況も異なるので、うちではこれをして欲しいということを明確に伝えてあげる必要があるでしょう。また、子どもから聞くのが、「いつしたら良いのかわからない」という声です。たとえば、子どもが「お皿洗いしたい」と言ってきても、親からしたら、忙しい時間は止めて欲しい、余裕がある時にやって欲しいというのが当然の考えです。でも、子どもからしたら、ある時はお手伝いをしなさいと言われ、ある時は今はお手伝いしないでと言われてしまって、段々と面倒くさくなってしまうのです。
ちなみに、上記のことは、学習に関してもほとんど同じです。親が楽しそうに本を読んでいる、調べ物をしている、等の様子を見れば、子どもは学習が楽しいものだと思います。一方で、何かの罰として学習をさせられれば、学習は嫌なものだと身についていきます。
余談ですが、子どもがお手伝いをしないという話を聞いていると、「うちの子は、女の子なのに」という言葉がけっこうあって、驚くことがあります。お話を聞いていくと「将来、家事が」ということにつながることが多いのですが、家事は女性がするものだという価値観がいまだに根深いように感じています。
質問2:食べ物の好き嫌いについて
偏食や食べ物の好き嫌いに関する相談を受けることもけっこうあります。生まれつき、味覚や触覚に敏感なところがある子どもであれば、偏食があることも仕方ありません。この方の場合は、そのような機能的な異常や偏りはないということですね。
この問題も、先ほどのお手伝いのこととも似ている所が多々あります。まずは、ご飯を食べるのが楽しいという体験を大切に考えていきたいと思います。食事の場面が、子どもにとって、おいしいものを食べられる楽しい場面なのか、嫌いなものを食べないといけない嫌な場面なのか、ということは非常に大切なことです。そして、誰よりも、まずは親や大人がご飯をおいしく食べている場面を見せることが必要でしょう。大人が「これ、嫌い」「食べたくない」と言って、好き嫌いをしていれば、子どももそれを見て真似をしますし、食べたことがない物も「あれはおいしくないんだな」と思ってしまいます。
また、大人の様子を子どもがよく見ているということを考えると、親子でゆとりを持って食べるレトルト食品や外食と、親がイライラしながら作って食べさせる手作りの料理、どちらが子どもにとって「おいしい」と思えるでしょうか。私は栄養のことに関してはよく分かっていませんが、家族の食事という場面を考えた場合に、それは単に栄養を取るためだけに食事をしているのではないということを考えてもらいたいと思います。
栄養的なことを考えると、好き嫌いをせず、色々な物を食べるのが理想的だとは思うのですが、現実的には、大人の多くも好き嫌いがあり、それでも生活ができていることを考えると、子どもに無理に好き嫌いなく食べさせるよりも、食事がおいしいとか楽しいと思える場面を作ることも大切だという観点も意識してもらえたらと思います。
質問3:買い物で「欲しい」と言って動かない子どもについて
この状況を「我慢ができていない」と捉えるのか、「我慢ができている」と捉えるのか、ということが大切だと思います。
確かに自分が欲しいものを買ってもらえるまでは動きませんが、親としてこれぐらいなら買ってあげても良いと思えるぐらいのものを買うことで解決できているのであれば、買った後に動いたという側面に注目してあげてはいかがでしょうか。この子の良いところは、「一つで我慢している」「高価なものは欲しがらない」「買ってもらったら動く」というところなので、そこを大人が言語化して、「一つで我慢して偉いね」「買ってもらったら、動いてすごいね」「お菓子で満足してくれてうれしい」など褒めてあげましょう。
子どもも、もしかしたら褒めてもらえるとは思っていないのでびっくりするかもしれませんが、できていないところよりも、できているところに注目してあげるということが大切です。我慢できずに1個買ったではなく、2個目を我慢したというスタンスが大切です。大人が「この子は我慢できない子だ」と思って接するのと、「この子は我慢できる子だ」と思って接するのでは、子ども側の受け取り方も変わってきて、「自分は我慢できる子だ」という自己イメージを持つことができます。
さいごに
しつけに限ったことではありませんが、子どもができないことに注目するのではなく、できたことに注目することで、子どもの行動は成長していきます。
歯磨きを嫌がった時にたくさん叱るのではなく、歯磨きを自分から始めた時にたくさん褒めてあげる、苦手なものを食べた時(あるいは食べようとした時)に親として嬉しいと伝えてあげる、このような大人の態度が子どものやる気を引き出して、少し嫌なことにでも挑戦するエネルギーとなっていきます。
子どものしつけ等に困ったとき、もし自分が子どもだったら、親にどう反応してほしいのかということを考えてみてはいかがでしょうか。

