ストレスコーピングとは?種類とギフテッドの子どものサポート方法を解説

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ギフテッドの子どもは、一般に高い知的能力や創造性、強い探究心を示します。

しかしその一方で、感情の強さや完璧主義、同年代との違和感など、独特のストレスを抱えやすいことも知られています。

ここでポイントになるのが「コーピングスキル」です。

コーピング(coping)とは、ストレスや困難に直面したときに、それに対処するための思考や行動の方法を指します。

単に我慢をするのではなく、自分自身で状況を整理し、感情を調整し、現実的な行動を選ぶ技術です。

この記事では、ギフテッドの子どものメンタルヘルスにとって有用なストレスコーピングの方法をご紹介します。

家庭で活用できるステップも解説しているのでぜひ最後まで読んでみてください。

ストレッサーとは、「ストレスの因(もと)」のことです。

以下では、ストレッサーとなりうるギフテッドの子どもの特性を見ていきましょう。

1. 強度の高い感情反応

心理学者カジミエシュ・ダブロフスキ(Kazimierz Dąbrowski)は、「過度激動(OE:overexcitability)」という概念を提唱しました。

これは知的・情緒的・感覚的などの反応が平均より強く・深い状態を指す心理学的用語です。

ギフテッドの子どもは、喜びも怒りも不安も、他の人の感情も強く感じやすい傾向がありOEを持つ場合が多いです。

2. 完璧主義

ギフテッドの子どもは、失敗への恐れが強く、「100点でなければ意味がない」「失敗してはダメだ」と感じることが多くあります。

これは、能力の高さゆえに、周囲の期待が大きい場合にも強化されます。

3. 非同期発達

ギフテッドの子どもは、知的年齢と情緒的年齢が一致しないことがあります。これを「非同期発達」と呼びます。

知的に高度な議論はできても、感情の扱いは年相応ということも珍しくありません。

2Eの場合だと、集中力や感情の処理の方法が同年齢と比べて低いケースもあります。

このギャップが自己評価の混乱を招くことになります。

4. 不安

共感性、想像力が高く感受性が豊かなギフテッドの子どもは、死、戦争、社会的不正などを幼少期から深く考える子どももいます。

抽象思考が早期に発達するためです。

しかし、その思考を支える感情調整力が追いついていない場合、強い不安に発展することがあります。

ASDや不安症傾向が高い場合はその不安がより複雑になります。

コーピングスキルとは、ストレス状況に直面したときに、状況をどう評価し、どのように対処するかという一連の心理的プロセスとアプローチです。

ストレスは、出来事そのものではなく、「その出来事をどう解釈したか」によって生まれると説明されます。

※ 心理学者リチャード・ラザルス(Richard Lazarus)とスーザン・フォークマン(Susan Folkman)が提唱したストレス理論より

人は、無意識に二段階の評価を行います。

まずは、「これは自分にとって脅威か、挑戦か、それとも無関係か」を判断し、次に、「自分には対処できる方法・資源があるか」を見積もるのです。

このプロセスを通過したあとに選択される具体的な対処行動がコーピングです。

ストレッサーに適切に対処して心の健康を守ることができるため、企業や組織・人事マネジメントの分野でも活用されています。

子育てのイライラが減る!話題の心理学 “ストレスコーピング”とは』の記事では、親御さんの子育てのストレスへのコーピングを解説していますのでぜひ合わせて読んでみてください。

上でご紹介した通り、ギフテッドの子どもは、理解力や洞察力が高い一方で、物事を深く受け止めやすく感受性が豊かな傾向があります。

そのためストレスコーピングは、ギフテッドの子ども向けにも大変有用な方法です。

コーピングスキルが身につくと、自分の状態に気づき、整え、回復していく力を育てることができるからです。

また、ギフテッドの子どもは創造性や探究心をコーピングに活かせる点も大きな強みです。

読書や創作活動、研究的なテーマへ没頭することが、強い感情を抑え込むのではなく、形を変えて表現することができるためです。

さらに、コーピングを身につけることには次のようなメリットがあります。

  • 自分の感情や思考の癖に気づきやすくなる
  • 過度な完璧主義や反芻思考を調整できる
  • 対人関係での摩擦が減る
  • 長期的な精神的安定につながる

大切なのは、「ストレスをなくすこと」を目標にしないことです。

問題は、ストレスの強度が高まりすぎて心身に負担をかけ続けることなので、その強度を調整するという視点が持てると良いでしょう。

心理学的には、コーピングは大きく3種類あります。以下で詳しく解説します。

問題焦点型コーピング

ストレスの原因(ストレッサー)そのものを変えようとする方法です。

計画を立てる、情報を集める、時間管理を見直す、教師に相談するなどが含まれます。

ストレッサーや状況を実際にコントロールすることができる場合に特に有効です。

情動焦点型コーピング

感情の強度を調整する方法です。

深呼吸、運動、音楽、信頼できる人との会話、感情日記などが該当します。

状況を自分たちではすぐには変えられない場合にも役立ちます。

神経科学の研究では、感情を言語化するだけでも扁桃体(恐怖や不安を処理する脳部位)の活動が低下することが示されています。

意味づけ型コーピング(認知的再評価)

出来事の解釈を再構成する、簡単にいうと、ものの見方そのものを変える方法です。

例えば、失敗した時に、「能力が否定された」ではなく「学んでいる過程なんだ」と捉え直すなどです。

ギフテッドの子どもは、とくに「意味づけ」の力を活かしやすい傾向があるため、この意味づけ型コーピングが比較的取り組みやすいでしょう。

出来事を多面的に捉え直す力は、感情の強さや深さをやわらげ、客観的な立場で自分を見つめることにつながります。

ただし、情動の強度が高い場合、理屈では「失敗は成長の過程なんだ」と分かっていても、心が激しく反応して理解と実行が一致しない場合もあるため実際のコーピングは簡単ではないと思います。

知性が高いことと、感情調整が自動的に成熟していることは別問題なので、本人の中にこうした葛藤が生じることは止むを得ないのです。

気持ちを押し殺すのではなく、子どもの状況に応じて上手に気持ちをコントロールするためのツールを選ぶのがコーピングスキルだというイメージを持てると良いでしょう。

以下では、コーピングを実践するに際しておすすめのコーピングリストというものをご紹介します。

コーピングリストとは

自分がストレスを感じたときに使える対処法を、あらかじめ書き出しておいた一覧表のことです。

ストレスが強いとき、人は考える力が一時的に落ちます。

前頭前野の働きが弱まり、感情反応が優位になるためです。つまり、落ち着く方法を思い出す力そのものが低下してしまいます。

そこで役立つのが、事前に作っておいたコーピングリストです。

何が気分転換や癒しになるかは人それぞれであるため、子どもも大人も、自分専用のコーピングリストを作っておくことには大きな意味があります。

コーピングリストの例:○○くんのコーピングリスト

1. すぐできるミニ回復(3〜5分)

  • お気に入りの本を3ページだけ読む
  • 好きなキャラクターを1枚スケッチする
  • イヤーマフをつけて静かな時間を作る

2. ちょっと落ち着きたいとき(10〜15分)

  • 部屋の中を2周歩く
  • 本の続きを“ごほうびタイム”として読む
  • レゴや立体作品をつくる

3. モヤモヤを言葉にしたいとき

  • 「今日いちばんイヤだったこと」を1行書く
  • 「ほんとうはどうしたかった?」と自分に聞く

4. エネルギーがあふれて落ち着かないとき

  • 紙をぐしゃっと丸めて投げる(安全に)
  • ジャンプ10回

コーピングリストを作成する際に参考になる視点を以下でご紹介します。

子どもと話し合いながら、コーピングのレパートリーを作成できると良いでしょう。

定期的に見直したり、変更したりしても大丈夫です。

1. 感情のラベリング(言語化)

神経科学の研究では、感情を言語化する行為(affect labeling)が、扁桃体の過活動を抑制し、前頭前野の調整機能を活性化することが示されています。

つまり名前をつけること自体が、情動の強度を下げるきっかけになります。

ギフテッドの子どもは語彙力や抽象概念の理解が高いことが多いため、感情の粒度を細かくするサポートがとても効果的です。

「悲しい」ではなく「失望」「無力感」「裏切られた感覚」「期待が崩れた感覚」といった精緻な言語化を行うことで、漠然とした不快感が、実際に扱える「情報」へと変わり、ストレスが軽減されます。

2. 認知の柔軟性を育てる

ギフテッドの子どもは論理構造を重視する傾向があるため、一度作られた自分の中のルールや基準を絶対視しやすい傾向があります。

ここで有効なのが、認知行動療法(CBT)に基づく思考の検討です。

たとえば、「100点でなければ意味がない」という信念に対して、その証拠は何か、反対の証拠は何か、第三者ならどう評価するかといったメタ認知的な問いかけを行いましょう。

説教よりも対話が有効です。単なる励ましではなく、思考の枠組みそのものを一緒に再構築するサポートが有用です。

認知を柔軟にできると、心理的回復力(レジリエンス)も高まります。

3. 身体的リセット技法

高度な抽象思考を持つ子どもほど、認知活動が優位になり、身体感覚への注意が低下しやすい傾向があります。

感情調整は身体の健康状態とも密接に関係していて、自律神経系、とくに交感神経の過活動が続くと、不安や怒りが増幅されます。

そのため、身体へのアプローチもコーピングスキルになります。

具体的には、呼吸法(ゆっくりした腹式呼吸)がおすすめです。

他にも生理学的に落ち着く状態を作り出すためには以下のような方法があります。

  • 散歩(特に自然環境)
  • 軽い有酸素運動
  • 入浴
  • リズミカルな活動(縄跳び、ダンス)

自然環境での歩行は注意回復理論でも効果が示されています。思考の過活動を鎮める、非常に実用的な方法です。

また、子どもでもヨガや瞑想なども有効です。

今の身体感覚に注意を向けることで、思考の過活動を一時的に停止させることもコーピングスキルの一つです。

4. 同質性のある仲間との交流

社会的比較理論によれば、人は自分と類似した他者との比較によって自己評価やアイデンティティを形成していきます。

孤独感を抱えやすいギフテッドの子どもは、「自分は異質だ」という認知を持ちやすく、それが自己概念の歪みを生むことがあります。

知的水準や興味関心が近い仲間との交流は、そうした孤立感を軽減し、自分らしさを取り戻すきっかけにもなります。

  1. 日常生活の中で使えるコーピングリストを親子で作成しておきましょう。
  2. 感情状態を確認しましょう。必要に応じて家庭内でも簡単なストレスチェックを行うことで、心の負荷を早期に把握できます。
  3. 子どもが、状況を論理的に説明ができる場合でも、感情が未成熟な場合があると理解しましょう。上で説明したように、知的に理解できることと、心身の安定が伴うことは別問題です。
  4. 「考えすぎ」と否定しないことも重要です。背景にある思考や感情を一緒に分析し、何に反応しているのかを明確にする姿勢を持てると良いでしょう。
  5. 失敗体験は安全に経験させましょう。本人の予想・期待と反する結果になる体験については振り返りを行い、改善や解決方法を学ぶ機会に変えていけると良いでしょう。

ご参考:家庭でできるストレスチェック

やり方

この1週間を思い出して、あてはまるものに○をつけます。
0=ほとんどない、1=ときどきある、2=よくある

① からだのサイン

□ なんだか体がつかれやすい
□ おなかや頭がいたくなることがある
□ ねつきがわるい/朝おきにくい
□ 音や光がいつもより気になる
□ じっとしているのがつらい

② きもちのサイン

□ イライラしやすい
□ すぐに「もうダメだ」と思ってしまう
□ 小さなことでもショックが大きい
□ なんとなく元気が出ない
□ 失敗を何度も思い出してしまう

③ あたまのサイン

□ 同じことをぐるぐる考えてしまう
□ 集中しにくい
□ 宿題にとりかかるのがとても大変
□ 「ちゃんとやらなきゃ」と強く思いすぎる
□ 本や好きなことも楽しめないときがある

判定の目安

合計点

  • 0〜7点:今は大きなストレスはなさそう
  • 8〜14点:少しつかれ気味。休む時間を増やす
  • 15点以上:かなりストレスが高い状態。調整が必要
使い方のコツ
  • 月に1〜2回やる
  • 点数より「前回との変化」を見る
  • 結果を責めない
  • 「どれがいちばんつらい?」と1つだけ聞く

厚生労働省もメンタルヘルス対策の中でストレスへの気づきと対処の重要性を示しており、家庭でも専門的視点を参考にすることは有益です。

必要に応じて、心理や医療の専門家に相談することで子どものストレスに早めに対処しメンタルヘルスを守ることができます。

いかがでしたか?ギフテッドの子どもにとってのコーピングのメリットがお分かりいただけたかと思います。

ギフテッドの素晴らしい特性の強さを扱う技術は、確かにトレーニングが必要ですが、コーピングスキルは、強い感情や鋭い洞察を安全に扱えるようにするとても理にかなったツールなのでぜひ実践してみてください。

わが子がギフテッド(Gifted)かもしれない、と思ったら、まずは「ギフテッド診断」テストを受けてみることもおすすめです。

「ギフテッド診断」テストでは、子どものIQ(知能指数)や行動特性、才能のバランスを多くの側面から確認することができます。

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