「考え方が大人びている」
「できることが多い一方で、アンバランスさも感じる」
お子さんの物事への興味の向き方や知能の使い方が、周りと異なると感じることはありませんか?
ギフテッドの特徴をもつ子どもを育てている保護者の多くが、こうした感覚を抱えています。
どうすれば子どもの才能や能力をきちんと伸ばしてあげられるのか、親としてできる支援・サポートの方法とは?日々の学習や環境を、より良いものにするにはどうすれば良いのか?
この記事では、そんな不安や迷いがある方へ、才能の前に整えておきたい心の状態『安心の土台』の重要性を専門家が心理的な視点で詳しく解説します。
この記事を書いた専門家

日塔 千裕 ひとう ちひろ
公認心理師・臨床心理士
発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。
ギフテッドとは | 定義や特徴を解説
ギフテッドとは、学力が高いだけでなく、知的能力・創造性・リーダーシップ・特定分野への強い興味など、複数の側面で突出した能力を持つ子どもや人を指します。
芸術など、得意な分野がはっきりしている子も多いでしょう。
なお、この記事での「ギフテッド」とは、能力の得意さが目立つ一方で、繊細さやしんどさも同時に抱えやすい子どもを含む、広い意味で扱います。
発達障害と併存する2E(ギフテッドと発達特性をあわせ持つ状態)の可能性など背景は異なる場合があり、医学・心理の観点でも理解が必要です。
周囲からは「よくできる子」「優秀な子」と捉えられ、その内側の揺れや戸惑いに理解されにくい・気付かれにくいことも少なくありません。
年齢に対して言葉や思考が大人びて見える一方で、生活面や感情面では不器用さが出るなど、アンバランスさが見えやすいこともあります。
ギフテッドの親の苦悩
ギフテッドのお子さん自身も、周囲から「すごいね」と言われるほど、無意識にプレッシャーとなっていたり、家庭の中でも知らず知らずのうちに評価が入りやすくなります。
学校や授業の場でも、「できる前提」で扱われやすいことがありますが、本人の特性とその場の環境が合わないと、負担が大きくなることがあるので注意したい点です。
また、子どもがうまくいかない場面があると、「私の関わりが悪いのでは」と原因を自分の中に引き取ってしまう親御さんも多いでしょう。
さらに、子どもの特性が周囲と異なるほど、その不安は強まりやすいものです。
才能を伸ばしたいと願う気持ちそのものは、愛情だからこそ、不安が生まれるのも自然なことです。
以下では、“もっと頑張るため”ではなく、親子の関係が少し呼吸しやすくなるための視点としてご紹介します。
日々の関わりを、少しずつ見直すための方法として参考にしてみてください。
ギフテッドの子どもに必要な心理的基盤“安心の土台”
ここでいう”安心の土台”とは、「困ったときに戻ってこられる場所がある」「うまくいかない日があっても大丈夫」と感じられる状態のことです。
子どもを甘やかしたり、何でも許したり、困らせないように先回りすることではありません。
心理的な意味での「安心」とは、
「失敗しても、できなくても、関係が壊れない」
「ありのままの自分で、ここにいていい」
と感じられる感覚のことです。
結果で愛されるのではなく、存在として受けとめられているという実感です。
この感覚は、目には見えないからこそ親としては、「今の関わりで足りているのか」が分かりにくく、不安になりやすい領域でもあります。
しかし、心の中にしっかりと根を張ると、その後の学び方や挑戦の仕方、人との関係の築き方に、長く良い影響を与え続けます。
たとえば、
・つまずいたときに立ち止まれる力
・助けを求める力
・失敗から回復する力(レジリエンス)
として子どもたちにしっかり身についていきます。
才能は、この安心の土台の上でこそ、のびのびと育っていくものです。
安心があるからこそ、挑戦するときも怖がらず、試してみる気持ちが芽生え、学びが“自然と“深めていくもの”へ変わっていきます。
なぜギフテッドの子ほど「安心」が揺らぎやすいのか(特徴と特性)
ギフテッドの子どもは、理解力や感受性が高い分、周囲の空気や大人の期待をとても敏感に感じ取ります。
・「期待されている」
・「がっかりされたくない」
・「ちゃんとできる子でいなければ」
こうした思いを、誰かに教えられなくても、自分なりに読み取ってしまうのです。
これは意識的な努力というより、もともとの特性や思考の深さゆえに起きやすい反応だと言えます。
また、「できる子」「しっかりした子」として扱われやすいことで、本当は不安だったり、分からなかったり、助けてほしい気持ちを、自分の中にしまい込んでしまうこともあります。
弱さや迷いを見せることが、“期待に応えられないこと”だと感じてしまうというのも理由の一つです。
外から見ると落ち着いているように見えても、内側では常に気を張っている、安心して力を抜ける場面が少ないまま、頭も心も働かせ続けている状態とも言えます。
その状態が続くと、安心の土台は少しずつ揺らいでいきます。
揺らぎは突然現れるのではなく、目立たない緊張の積み重ねとして、静かに進んでいくことが多いのです。
才能を優先しすぎるときの親の心理と注意点
「この子のために」と思って、以下のような関わりを重ねていくうちに、知らず知らずのうちに子どもが学んでしまうことがあります。
・より高いレベルを目指す
・できることを増やす
・強みや得意を伸ばす
言葉で教えられるというより、日々のやりとりの“空気”として伝わっていくことが多いです。
「できない自分には価値がない」「失敗すると、がっかりされる」という感覚を持つこともあるでしょう。
成果が出たときほど注目され、うまくいかなかったときは話題にされにくい、そんな小さな積み重ねが子どもの中で意味づけられていくことがあります。
これは、親が意図して教えたものではなく、「応援したい」「力になりたい」という思いから生まれた結果です。
だからこそ、多くの親御さんが後から気づき、戸惑いを覚えます。精神面の負担が増え、学習や挑戦の機会を自分から避けてしまう子もいます。
しかしこの感覚が強くなると、以下のような形で表に現れることがあります。
・失敗を極端に怖がる
・挑戦そのものを避ける
・完璧であろうと自分を追い詰める
一見すると意欲的・真面目に見える行動の裏に、「失敗してはいけない」という強い不安が隠れている場合もあります。
安心の土台がある子に見られやすいサイン
安心の土台が育っている子どもには、こんな姿が見られることがあります。
・「分からない」「できない」と言える
・感情の揺れを、怒りや涙として外に出せる
・失敗しても、もう一度やってみようとする
これらは一見すると「手がかかる」「未熟なのでは」と感じられ、とくに落ち着いている子・聞き分けのよい子と比べると不安になることもあるかもしれません。
しかし実は、これらの姿は「助けを求めても大丈夫」「感情を出しても受けとめてもらえる」という安心感があるからこそ表に出てくるものでもあります。
感情を外に出せるということは、心の中に溜め込まず、関係の中で調整できているということです。
失敗をしても再挑戦できるのは、「失敗しても自分は大丈夫」という感覚が支えになっているからだと言えます。
逆に、いつも落ち着いていて、何でも一人でこなしているように見える子ほど、無意識に緊張を抱え、弱さを見せないよう頑張り続けていることもあります。
“問題がないように見える”ことが、必ずしも安心の指標とは限らないという視点も、大切にしておきたいところです。
家庭でできる”安心の土台”の育て方
安心の土台を育てるために、特別な教材や高度な教育は必要ありません。
家庭の中で交わされる、日々の何気ないやりとりこそが、いちばんの土台になります。保護者ができる支援の方法は、日々の関係の中にあります。
大切なのは、
・結果よりも「気持ち」に目を向けること
・評価よりも「関係」を優先すること
・親が答えを急がないこと
たとえば、「できなかったね」ではなく、
「悔しかったね」
「不安だったんだね」
と、感じていることに言葉を添える。
それは問題を解決するためではなく、「あなたの感じていることを分かろうとしている」という姿勢を伝える行動です。心理的なサポートは、こうした小さな場面で積み上がります。
うまくいかなかったときに、「どうしたら次はできるか」より先に、「ここにいていいよ」というメッセージが伝わる関わりをする。
この順番が守られることで、子どもは初めて安心して次の一歩を考えられるようになります。
完璧に続ける必要はありません。
うまくできなかった日があっても、気づいたときに立ち戻れること自体が、安心のモデルになります。
それだけでも、子どもの中に「安心」は、少しずつ、確かに積み重なっていきます。
安心の土台は一足飛びに作れるものではなく、日々の小さなやりとりや関わりの積み重ねによって、ゆっくりと育っていくものなのです。
「伸ばす」と「支える」を両立させるための視点
才能を伸ばすことと、安心を支えることは、対立するものではありません。
ただし、順番があります。安心が先、才能はそのあとです。
これは「才能を後回しにする」という意味ではなく、安心があってこそ、才能が本来の力を発揮できるということになります。
たとえば家づくりも、地面や基盤がぐらついたままでは、その上にどれほど立派な家を建てようとしても安定しません。まず土台を整え、その基盤がしっかりしてからこそ、その上に家を建てていくことができるのです。
土台(=安心)があるからこそ、
・挑戦する勇気が出る
・失敗から学べる
・自分なりのペースで深めていける
といった姿勢が育っていきます。
逆に、土台(=安心)が揺らいだ状態では、能力があっても力を出しきれなかったり、挑戦そのものを避けてしまうこともあります。
才能は、引き上げるものではなく、育っていくものです。
大人が常に先導し続けなくても、子ども自身が「やってみたい」「知りたい」と感じられる余白があれば、学びは自然と深まっていきます。
親がすべてをコントロールしようとしなくても、安心の土台があれば、子どもは自分の力で伸びていきます。
まとめ ─ 才能を信じる前に、存在そのものを信じる
才能が伸びるかどうかよりも、
「自分はここにいていい」
「失敗しても大丈夫」
と感じられることは、子どもにとって一生の支えになります。
「もっとできるはずなのに」「このままで大丈夫だろうか」と迷う場合は、いったん立ち止まってみてください。
すでに十分に考え、悩み、向き合っています。
“安心の土台”は、今日からでも、何度でも積み直すことができます。
まずは、才能そのものよりも、存在そのものを信じること。才能は、その上で育っていきます。
・結果よりも「気持ち」に目を向けること
・評価よりも「関係」を優先すること
・親が答えを急がないこと
を大切に考えてみていただけると幸いです。
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