学校や習いごとでは落ち着いていて、周囲からも「よくできる子」「しっかりした子」と評価される。
先生からの連絡も特に問題なし。先生に確認しても、とても良い評価ばかり。
けれど、家に帰ると些細なことで泣いたり怒ったり、急にふさぎ込んだりする。
そんな「外と家(内)のギャップ」を抱えたギフテッドの子どもは少なくありません。
この記事では、IQが高いギフテッドの子どもに見られやすいマスキングの心理的メカニズムと、その延長線上にある過剰適応・自己否定との関連や特徴を、専門家がわかりやすく解説していきます。
この記事を書いた専門家

日塔 千裕 ひとう ちひろ
公認心理師・臨床心理士
発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。
“がんばれているように見える”状況とは
親御さんからすると、
- 外ではあんなにしっかりしているのに、なぜここまで不安定になるのか
- 何でこんなに外と家で違うの?
- 私の育て方が悪いの?
と、悩みや迷いが生じやすく、周囲の人に理解されにくいことが多いです。
この背景にしばしばあるのが、「マスキング」と呼ばれる心理的な働きです。
マスキングとは、本来の自分の感じ方や反応を隠し、“周囲にとって望ましい自分”を演じることで集団に適応しようとする行動です。
それ自体は適応のための力ではあるのですが、続けるほどに、心と身体に大きな負荷がかかり、やがて過剰適応や自己否定へとつながっていくことがあります。
以下では、特にマスキングが起こりやすいギフテッドの子どもについてマスキングとの関係をご紹介していきます。
ギフテッドの感じ取りすぎる脳と心の負荷
ギフテッドの子どもは、一般的に「才能が豊か」「知能が高い」「学習が早い」といった側面が注目されがちです。
しかし、実際には才能や知性だけでなく、感情や感覚も非常に過敏であることが多い、という点が重要です。
知性・感情・感覚がフル稼働
- 周囲の会話のニュアンスや表情のわずかな変化
- 友だちや先生の機嫌、教室全体の雰囲気
- 光や音、匂いなどの感覚刺激の微妙な違い
これらを、ギフテッドの子どもは一度に多く、細かく、深く受け取っています。
“感じ取りすぎる脳”とも言える状態で、常に情報処理がフル回転しているイメージです。
そのため、周囲の子が気にならないようなことでも、
- うるさくてつらい
- 落ち着かない
- 理不尽に感じて納得がいかない
など、心の中では強いストレスが生じていることがあります。
違いに気づくことで生まれる葛藤
さらに、ギフテッドの子どもは、一般的な年齢よりも早い時期に自分と他者の違いに気付きやすくなります。
- 自分の考え方は周りと違うのかもしれない
- 自分だけ感情の動きが大きいのかもしれない
- 周りの反応と、自分の反応が合っていない気がする
この違いは、“個性”として肯定的に受け止められればよいですが、「変わった子」「周りに合わせられない子」などと受け取られる機会も多くあります。
そのような経験が続くと、子どもは、このままの自分では、ここにいてはいけないのかもしれない…という不安を抱えやすくなります。
その不安から自分を守るための手段として、本来の自分を隠し、周囲に合わせた自分を演じる「マスキング」を無意識に選びやすくなるのです。
マスキングとは?心理的メカニズム
マスキングとは、一言でいえば「本当の自分を見せないようにすること」です。
ここでいう自分とは、知的に高い能力だけではなく、感じ方・考え方・反応のしかたなど人間としてのすべての側面を含みます。
本来の感情を隠し周囲に合わせる自分を作る
ギフテッドの子どもが行うマスキングには、例えば次のような行動が含まれます。
- 本当は不安・不快でも、平気なように振る舞う
- 納得していないことでも、分かったと受け入れたように見せる
- 疲れていても、笑顔で参加し続ける
- 理不尽さを感じても、指摘せず飲み込む
これらはすべて、「嫌われたくない」「変に思われたくない」「周囲に迷惑をかけたくない」などの思いから出てくる自己防衛的な適応行動です。
ADHDやASDなどの発達障害の特性を隠して頑張って困難に対応したりすることもマスキングに該当します。
ギフテッドの子どもがマスキングを選びやすい背景
ギフテッドの子どもが特にマスキングをしやすい理由として、以下のような要素が組み合わさっています。
- 感受性・共感性の高さ:他人の表情や空気に敏感なため、自分が感情を出すことで場の空気が乱れることを感じ取りやすく、無意識に自分を抑える方向に働く。
- 洞察力と予測力:「ここでこう言うと、こう思われるだろう」という予測ができてしまうため、結果として無難な選択をしてしまうことが増える。
- 評価への敏感さ:「できる子」「しっかりしている子」など期待されていると感じるほど、その期待を裏切らないように、「その姿でいなければならない」と思い込む。
このように、マスキングはギフテッド特有の能力と感受性の高さゆえに起こりやすいメカニズムであり、決して怠慢や単なる“性格”の問題ではありません。
特に、女の子の場合にはこの傾向が強くなると言われています。
ギフテッドのマスキングが“過剰適応”につながる心理構造
マスキングを続ける中で、子どもの中には次第にこうした考えが根づいていきます。
- 期待されている自分でいなくてはいけない
- 迷惑をかけてはいけない
- 弱さを見せてはいけない
このような思い込みが強くなると、「過剰適応」という状態に進みやすくなります。
本来の限界を超えて頑張り続けてしまう
過剰適応とは、自分の心身の状態を無視して、周囲の期待や役割に過度に合わせてしまう状態です。
- 体調が悪くても頑張り続ける
- しんどくても「大丈夫」と言い張る
- 役割を抱え込み、休むことに強い罪悪感を持つ
ギフテッドの子どもは理解力や作業遂行能力が高いため、本来の限界を超えてもしばらくは頑張れてしまいます。
しかし、“できてしまう”がゆえに、周囲も本人も無理をしていることに気づきにくいのが難しいところです。
家庭での反動として表れる心身のサイン
過剰適応が進むと、その負担は家庭で一気に噴き出すことがあります。
- 家に帰った途端に不機嫌・癇癪・涙が止まらない
- 休日になると動けない、寝込む
- 好きだったことにも手がつかない
外で「よくできている」ほど、家ではエネルギー切れの状態になりやすいのです。
これは、外ではマスキングと過剰適応で走り続け、家でようやく“本来の自分”に戻っている姿とも言えます。
ギフテッドの子どもが過剰適応したら起こる自己否定
過剰適応の状態が長く続くと、子どもの内面では少しずつ「自己否定」の傾向が育っていくため注意が必要です。
“本当の自分は認められない”という誤った信念
マスキングを続けていると、
- 本音を出すと迷惑をかける
- 弱さを見せると嫌われる
- ありのままの自分は受け入れられない
といった間違ったメッセージを、子ども自身が自分に向けて繰り返し送っていることになります。
そうすると、子どもは次第に、「本当の自分はダメなんだ」「自分には価値がないのではないか」と感じやすくなります。
たとえ周囲から「すごいね」「よくできるね」と言われていても、その評価は「演じている自分」に向けられたものだと感じてしまうのです・・・
成功しても満たされない
また、ギフテッドの子どもは完璧主義になりやすく、「100点以外は失敗」と感じてしまうことがあります。
過剰適応が強い子ほど、「求められているレベルは常に最高値」という感覚になりやすく、わずかなミスであっても、自分を強く責めます。
「90点でもダメだ」「前よりできなくなった自分には価値がない」といった極端な自己評価は、やがて慢性的な自己否定へとつながります。
自己否定によるマスキングの強化
自己否定感が強くなるほど、「本当の自分を見せるのが怖い」という気持ちが強まり、マスキングはさらに強化されます。
- 本音を話さない
- 困っていても「大丈夫」と言う
- 周囲の期待に合わせ続ける
こうして、マスキング → 過剰適応 → 自己否定 → さらにマスキングという悪循環が続いてしまうのです。
ギフテッドの子どもをマスキングの悪循環から守るための家庭での対応
では、この悪循環から子どもを守るために、親御さんができる関わりは、どのようなものがあるのでしょうか。
1. 子どもが「感じていること」を丁寧に聴く
まず、結果や行動だけでなく、
「どう感じた?」
「どんなところがしんどかった?」
「どのあたりは楽しかった?」
といった問いかけで、子どもの内側に光を当てることが大切です。
「できた」「できない」という結果ではなく、「どう感じたか」「どれくらい負担だったか」というプロセスの中で感じた子どもの気持ち・感覚を一緒に言葉にしていきましょう。
2. 家を「素の自分でいられる場所」にする
家では、”泣いても、怒っても、失敗しても、あなたはあなたのままで大丈夫”というメッセージを、言葉と態度の両方で伝えていくことが重要です。
親として完璧に穏やかでいる必要はありません。
時には「お母さん(お父さん)も疲れちゃったな」と、自分の限界を正直に共有することで、「人は誰でも限界がある」「休んでいい」という感覚を子どもと分かち合うこともできます。
あえて親の方の弱い姿・ダメな部分を見せることで、子どもも「見せていいんだ」と思いやすくなるでしょう。
3. 失敗や弱さを否定しない
「どうしてできなかったの?」という失敗の原因探しよりも、「難しい中でここまで頑張ったんだね」「うまくいかなくてつらかったね」といった言葉かけが、“失敗しても関係は変わらない”という安心感を育ててくれます。
これは、自己否定への傾きが強いギフテッドの子どもにとって、非常に大きな支えになるのです。
4. 親自身がプレッシャーを手放す
親が「ちゃんと育てなきゃ」「こうあるべきだ」と強く思いすぎていると、その緊張感は子どもに伝わり精神的にも負担になります。
「うちの子はうちの子のペースでいい」「できること・できないことがあって、あたり前」と、親自身が少し肩の力を抜くことが、子どもにとっても安心材料になります。
5. 教育現場・専門家と協働して負担を軽減する
マスキングや過剰適応の負担が大きいと感じるときには、学校の先生やスクールカウンセラー、臨床心理士などに相談し、「一緒にどう支えるか」を考えていくことも大切です。
- 教室での環境調整
- 休息の取り方
- 負担になっている課題の調整
など、家庭だけで抱え込まず、「サポートチーム」をつくる意識を持てると安心です。
ただ、ここで難しいのが、まだまだギフテッドの子どもへの理解が乏しく、冒頭でもお伝えしたように理解されないケースが多いのが現状です。
数回話しても、理解してもらうのが難しいなと感じたら、一度、その方との相談はやめて大丈夫です。
相談をすること自体にも相当なエネルギーを使いますので、親御さんがそこで疲弊してしまっては意味がありません。
理解してくれる方も必ずいますので、その人と出会えるように別の適切な相談先を探していきましょう。
と言っても、またイチから相談もしんどいし、相談できる場も限られていて限界がありますよね。
そのような場合には、私のところに一度、相談に来てください。今後の方向性を一緒に考えましょう。
おわりに
ギフテッドの子どもがマスキングを続ける背景には、「周りとうまくやろう」「迷惑をかけたくない」という、健気なまでの思いがあります。
その一方で、そのがんばりが過剰になり、過剰適応や自己否定へとつながってしまうことも少なくありません。
マスキングは「弱さ」ではなく、生きづらさを抱えたまま必死に適応しようとする力の表れとも言えます。
だからこそ、そのメカニズムを親御さんが理解し、「本当のあなたでいていいよ」と伝え続けることが、何よりの支援になります。
- できるからといって、平気なわけではない
- 笑っているからといって、楽なわけではない
- 問題がなく見えるからといって、困っていないわけではない
その前提を心に留めながら、「今日、この子はどんな気持ちで一日を過ごしてきたのだろう?」と、そっと想像してみる。
その小さな問いかけが、マスキングの悪循環から子どもを守り、“本当の自分”を取り戻すための大きな一歩になります。
親が「気づこう」とする姿勢そのものが、子どもにとっての何よりの安心材料なのです。
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