子どもの困った行動!家庭でできるソーシャルスキルトレーニング(SST)を専門家が解説

「またそんなことして!」
「どうして、困らせるようなことをするの?」

日々の子育てで、このように感じることはありませんか?

子どもの「困った行動」は自分なりの気持ちや理由が隠れていることがあります。

子どもが自分の思いや欲求をうまく言葉にできないとき、行動として表れることもあるのです。

この記事では、子どもの行動の背景を理解し、SST(ソーシャルスキルトレーニング)の視点から、家庭でできる関わり方を紹介します。

困った行動をきっかけに、親子の関係がより深まるヒントを専門家がご紹介します。

執筆:いけや さき


公認心理師・臨床心理士

精神科病院、療育施設、心療内科・児童精神科クリニックなど主に医療と福祉領域にて心理士として従事。発達障害の子どもたちや保護者、女性のメンタルヘルス等のサポートを行う。

「言うことを聞かない」「わざとやってる?」と感じる子どもの困った行動。

しかしその行動は、子どもなりのSOSの可能性も考えられます。

大人に伝えきれない思いや、言葉にならない不安が「困った行動」という形で表れることがあるのです。

まずは「どんな気持ちが隠れているのだろう?」「どうしてこの行動をするのだろう」と一歩立ち止まる視点が、親子の関係を大きく変える第一歩となるかもしれません。

たとえば、以下の行動があれば、より一層SOSのサインを出している可能性が高まります。

行動は本人よりも親など周囲の方が気づきやすいです。

子どもの行動には、何かしらの背景や理由があることが多いです。

よくある3つのパターンは以下の3つです。

それぞれについて以下で詳しく解説します。


環境の変化やプレッシャーが原因で、落ち着かない行動につながることがあります。

子どもは自分の不安をうまく言葉にできず、行動で示す場合があるためです。

学校での出来事、塾や習い事、親子関係などがストレスとなり、反抗するような態度になる子もいます。

不安の背景に気づくことで、注意するのではなく、子どもが安心できる対応を考えることができるでしょう。


伝える力が育っていないことから、行動で表現する子もいます。

困った行動は、自分の思いをうまく整理できないサインでもあるのです。

たとえば「嫌なことがあった」とは言えず、急に泣き出す、物を投げるなどの行動で表す子もいるでしょう。

言葉の力が育つ過程として、困った行動が出ていることもあると捉えると、見方が変わるかもしれません。

また、国語の成績がよかったり、知能が高かったりするからといって気持ちや考えを言語化できるわけではないのです。

社会性の発達にも目を向けることで、子どものSOSに気づきやすくなるでしょう。


困った行動は、子どもなりの「私(僕)を見て」のサインである可能性もあります。

子ども自身が「普段かまってもらえない」「関心を持ってもらえない」と感じていると、ネガティブな行動で注目を集めようとすることがあります。

注意されることでコミュニケーションを得られたと感じてしまうのです。

たとえば、弟や妹が生まれてから癇癪が増えたり、授業中に先生の邪魔をしたりすることも注目を求めている行動の可能性があります。

困った行動は、「もっと見てほしい」の表現として受け止めてみると、関わり方も変わると感じませんか?

SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、困った行動の背景にある社会的スキルの未成熟さに注目し、社会性を育てる支援方法です。

困った行動を叱るのではなく、「どうしたらいいのか?」という視点で、子どもと関わるのがSSTの特徴。

子どもにとって「困った行動」は、自分の気持ちや状況をどう伝えたらいいかわからないという表れであることを、受け止めてみましょう。

SSTの考え方を取り入れることで、子どもと気持ちを共有しながら、望ましい行動へと導くことができます。


家庭でも取り入れやすいSST的な関わり方を3つご紹介します。

01. 気持ちの名前を一緒に探す

自分の気持ちの名前を見つけて整理してみましょう。

「うれしい」「かなしい」など、感情の名前を見つけることは、自己理解や他者理解の第一歩だからです。

「今、どんな気持ちだった?」「怒ってたのかな?悲しかった?」と対話を促すことも1つの方法です。

教材としてアニメや絵本も活用できます。

たとえば、ピクサーの「インサイド・ヘッド」、絵本なら「カラーモンスター」「ねずみくんのきもち」などがおすすめです。

「こころキャラ図鑑」や「12歳までに知っておきたい言い換え図鑑」など発達段階に応じて、教材は工夫してみてくださいね。

気持ちに名前をつける習慣が、自己表現力を育てます。

02. 行動の選択肢を具体的に伝える

困った行動の代わりになる選択肢を具体的に伝えてみましょう。

子どもはどう行動すればよいか、まだ学んでいる途中。

伝わりやすい表現がわからない可能性があるのです。

たとえば「叩くのではなくて、やめてって言おうね」「やりたくても、順番を待ってみんなで楽しもうね」などはいかがでしょうか。

その際、困った行動を完全に否定するのではなく、行動したくなる気持ちもわかるけどというニュアンスで関わると、子どもは「わかってくれた」という気持ちになりやすいです。

共感と具体的な提案をセットにすることは、望ましい行動の定着と親子の信頼関係につながります。

03. 成功体験を積める環境づくり

「できた!」を感じられる小さな機会をたくさん作っていきましょう。

自分の行動がうまくいったと感じられると、自信や安心感が育ちます。

たとえば少し我慢できたらほめる、約束を守ったらシールを貼るなどの小さな成功を積み重ねるのはいかがでしょうか。

成功体験をどう受け止めるか、もし少し失敗したときもどう切り替えるかを一緒に考えていくことで、子どもの社会性と自己肯定感の土台をつくっていきましょう。

困った行動は親子の信頼関係を深めるきっかけになることもあります。


子どもの困った行動を目にしたとき「どうしたの?」と、気持ちに耳を傾けてみましょう。

子どもは“かってもらえたという安心感を感じると、行動も落ち着きやすくなります。

注意されると、怖いという感覚になる子もいれば、「悪さをすれば親が自分を見てくれる」と誤学習してしまうこともあるのです。

叱れば理解してできるようになるとは限りません。

たとえばかんしゃくで泣きわめいているとき、「いい加減にして!」「静かにしなさい!」と言うのではなく、「○○が嫌だったんだね」と共感から入るのもおすすめです。

子どもの目線に立ち、聴く姿勢が、子どもにとって最大の安心材料になりますよ。


子どもの反応を通して、親自身の関わり方や環境を見直すこともできます。

困った行動は、子どもだけが理由とは限らないからです。

たとえば、最近忙しくて話す時間が減っていたり、兄弟姉妹と比較していたり、怒ってばかりだったかもしれないと気づきにつながるかもしれません。

子どもを通して、親も気づき育っていくという視点が、より良い関係づくりに役立ちます。

子どもの困った行動は、うまく伝えられないときのSOSの可能性があり、SSTを活用してかかわり方を工夫できる可能性についてお話ししました。

子どもの困った行動に悩んでいる方は、家庭だけで抱え込まず、専門的な視点からのアドバイスを受けることも大切です。

Gifted Gazeでは、子どもの特性を活かした関わり方や非認知能力の見つけ方をサポートしています。

「子どもに合った声かけが知りたい」「どこまで関わればいいのかわからない」そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。

親子にとって安心できる道を、一緒に探していきましょう。