【非認知能力】子どものリーダーシップとは?専門家が解説

大人だけでなく子どもたちも、家庭、クラス、部活、クラブや習い事、地域コミュニティなど、様々な集団に属して生活しています。

リーダーシップはそのような集団活動と密接に関わっており、リーダーと集団メンバーとが一緒に発揮していく力だと考えられています。

今回は、リーダーシップについての解説と共に、リーダーシップの発揮に繋がる力をご家庭でどう育んでいくかのアイデアを専門家がご紹介します。

こうした力を育むことで、子どもがリーダーとしても集団メンバーとしても、集団に貢献できる楽しさや達成感、自分の居場所だと感じられる喜びなどを経験できることに繋がるといいなと思います。

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執筆:山崎 日菜乃


公認心理師・臨床心理士

心理士としてメールカウンセリングに3年半従事し、家族関係の悩み、心身の不調、仕事の悩みなど、様々な困り事へのサポートを行う。アメリカ合衆国在住。

リーダーシップとは「集団の目標達成を意図して、集団のメンバーに対して発揮される影響力、そのプロセス」のことを指します。

リーダーシップの研究は100年以上にわたって行われてきており、時代の変化と共に求められるリーダー像や、リーダーシップの捉え方も変化してきました。

以前は、リーダーがフォロワー(集団のメンバー)の先頭に立ち、指示や命令を行うことでフォロワーを牽引するという、リーダー中心のリーダーシップが主流でした。

それに対して昨今では、フォロワーの自律性を重視し、フォロワーの主体的な行動を引き出すような、フォロワー中心のリーダーシップが注目されてきています。

それに伴い、リーダーシップは、リーダーとフォロワーの相互作用のプロセスであるという捉え方がされるようになりました。

ここからはリーダーシップに繋がる力として3つの要素を取り上げ、それらの力をご家庭で育むためのアイデアをご紹介します。

これらの力は、リーダーシップだけでなく、自己肯定感やレジリエンスなど、他の様々な非認知能力とも関わっています。

これらを育むことで、子どもが自分らしく過ごしていけるだけでなく、自分なりのリーダーシップを発揮することを通して、集団に貢献する楽しさや達成感、集団の一員として認められたり居場所だと感じられる喜びなどを感じられることにも繋がるでしょう。


自己認識とは、自分の感情や考えを把握したり、ストレスや感情に自分がどんな風に反応するか、どう対処できるかを知ることをいいます。

子どもの素敵なところを見つけて伝える

子どもが自分のことをよりよく理解できるように、子どもの素敵なところを見つけたら言葉にして伝えてみましょう。

子どもにとって、自分のことを自分で理解するのは難しいため、身の回りの人からの声かけはとても重要な意味を持ちます。

子どもと過ごしていると叱ることは当然あると思いますが、ネガティブな声かけばかりだと子どもの自己認識もネガティブに偏ってしまうため、素敵なところを伝えるという心がけをしておくことでバランスがとりやすくなると思います。

また、素敵なところを見つけた時には「どうしてあの時あの子に声をかけたの?」「どうしてチャレンジできたのかな?」などと、子どもの行動の背景にある考えや気持ちを言葉にして引き出してあげるのもいいですね。

子どもの興味や好きなことに気付いてサポートする

自分の興味や好きなことを知っていることも、自己認識力の大切な要素です。

子どもが楽しんでいることやワクワクしていることを見つけたら、それに夢中になれる環境を作ったり、一緒に楽しむなどして伸ばしてあげられるといいですね。

また、「こういうことが好き(嫌い)なのかな?」「どんなところが好き(嫌い)?」などと、子どもが自分の興味や価値観に気付けるような声かけをしてあげるのもいいでしょう。

興味や好きという気持ちは、子どもの心の支えや経験を広げる糧になってくれるはずです。

人と関わる機会を作る

自分についてよく知るには、他者との関わりのなかで様々な経験をすることも大切です。

人から言われた言葉や家族以外の人との人間関係を通して、家族の中では気付くことのできなかった自分の一面を発見できることもあるかもしれません。

また、人と関わっていくと、嬉しいことや楽しいことだけでなく悔しいことや悲しいこともあるでしょう。

様々な感情を経験することで、ストレスや感情への対処について試行錯誤をする機会にもなると思います。

自分について、人間関係について学んでいる最中である子どもにとって、保護者の方のサポートは必要不可欠です。

保護者の方に感情を受け止めてもらう経験を積み重ねることで、だんだんと子ども自身が自分の感情を受け止められるようになっていくでしょう。


責任感とは、自分の役割を認識しそれに応えることです。

家事へ参加する

責任感を身に付けるには、自分の選択や行動が他者にどのような影響を与えるのかを学ぶことが必要です。家事は家族の生活に直結するため、それを学ぶのにぴったりといえるでしょう。

大人がやっている家事に子どもが興味を示したら、まずは見せたり説明したり、横で簡単なことを手伝ってもらうのもいいですね。

子どもの成長に応じて、シンクに食器を持っていく、友達が遊びに来る前に部屋を掃除する、ペットのお世話をするなど、特定の家事を任せるのもよい経験になるでしょう。

その際、子どもに任せきりにしたり完璧にこなすことを期待したりせず、失敗した時にフォローできる余裕を設けておくことが大切です。また、できたこと、チャレンジできたことはしっかり褒めてあげましょう。

ミスや失敗の経験をする

誰しもミスや失敗をしてしまうことがありますよね。例えば、シンクに食器を持っていく役割を任されていても、時には忘れたり、慌てて運んで食器を割ってしまうこともあるかもしれません。そのような経験をすることで、自分が役割を忘れるとどんなことが起こるのか、仲間が失敗した時にどのように助け合ったりフォローしたりできるのかを体験的に学ぶことができるでしょう。

子どもがミスや失敗をした時の保護者の方の振る舞いは、子どもが仲間のミスや失敗にどう対応するかの見本にもなります。まずはご家庭が、ミスや失敗を安全に経験できる場所、フォローし合える場所になれるといいなと思います。

フォロワーの経験をする

リーダーシップはリーダーとフォロワーとの相互作用のプロセスであると考えられているように、リーダーシップが発揮されるにはフォロワーの力が必要不可欠です。

また、集団においてリーダーの役職は少数ですが、フォロワーになる機会はたくさんあります。

そのため、フォロワーの経験から学べるチャンス、フォロワーとしての経験を活かせるチャンスも多いと言えるでしょう。

フォロワーの立場を経験することで、フォロワーとしての自分の行動がリーダーや集団にどう影響を与えるのかを知ったり、仲間と協力することや責任を果たすことの楽しさを学ぶことができるでしょう。

それに加えて、フォロワーの視点からリーダーを見たり、リーダーから指示や声かけをされる経験を通して、リーダーにはどういう姿勢や行動が求められているのかに気付く機会にもなることと思います。


偏見や先入観にとらわれず、相手を理解し尊重できることです。

自己肯定感を育む

自分のことを認めたり大事にできてはじめて他者のことも尊重することができます。

そのため、まずは保護者の方に自分の存在、気持ちや考えを受け止めてもらう経験、ご家庭で安心してのびのび過ごせる経験を積めることが大切です。

子どもは自分とは違う一人の人間なのだということを忘れずに、真剣に子どもの話を聞いたり、ご家庭が子どもが不安な時や疲れた時にいつでもホッと休める場所であれるといいですね。

他者との違いを理解するサポート

子どもが自分と違う特徴のある人について「どうしてあの子は○○なの?」などという質問をすることもあるでしょう。子どもは悪意ではなく好奇心や興味から質問をしているため、叱らずにオープンに話し合うことが大切です。

そうすることで人との違いは悪いことではなく、その違いについて話し合うことができると態度で示すことができるでしょう。

「どうして疑問に思ったの?」と子どもの気持ちを聞いてみるのもいいですね。

質問に対しては年齢に応じた率直な答えを返し、分からないことは正直に分からないと言って準備をしてから答えるようにするといいと思います。

また、自分と違うことを「変」「おかしい」と言うなど、子どもが不適切な言葉遣いをした時には適切な言葉に言い換えてあげることもよいサポートになるでしょう。

様々な文化に触れる

博物館や文化施設を訪れたり、様々な地域や国の文化を学んだり体験したりすることも、人の多様性を実感できるきっかけになるでしょう。

自分とは違う文化を素敵だと感じられたり、社会には色々な人がいてそれは楽しくて面白いことなのだと思えると、自然と他者を尊重する姿勢に繋がるでしょう。

例えば、絵が好きな子には様々な地域や国のアートを、運動が好きな子には様々なスポーツを、他にも、料理、音楽、衣服、行事など、子どもの好きなことを通して楽しく多様性に触れてみるのもいいですね。

リーダーシップのあり方は時代と共に変化してきています。

また、人前で話すのが得意な(苦手な)子、人の話を聞くのが得意な(苦手な)子がいるように、子どもの得意苦手分野も人それぞれでしょう。

そのように多様な人が集まるからこそ、集団は面白くなります。

リーダーシップとはこういうものだ、うちの子はリーダーらしくないのでは、といった先入観にとらわれずに、子どもの得意なことや素敵なところを見つけ、子どもが集団活動や人との関わりを楽しめるようなサポートができるといいですね。

参考