小学生の子どものADHD(注意欠如多動症)とは?特徴や原因、対処法・治療法も解説

子どものADHDと聞くと、じっとしていられない、忘れ物が多いイメージですが、それだけではありません。

目立ちにくいし言葉にはできないけど、本人が困っている症状もあれば、周りが困っている症状もあります。

今回の記事では、臨床心理士・公認心理師が「ADHDの特徴」「グレーゾーン」「小学生のADHDへの接し方」などを詳しく解説します。

この記事を書いた専門家

いけや さき


公認心理師、臨床心理士

精神科病院、療育施設、心療内科・児童精神科クリニックなど主に医療と福祉領域にて心理士として従事。発達障害の子どもたちや保護者、女性のメンタルヘルス等のサポートを行いながら、webライターとしても活動中。

ADHDとは、発達障害(神経発達症)の1つで、不注意・衝動性・多動性といった特性を持っています。

「落ち着きがない=ADHD」というわけではありませんが、病院などへ相談に行くきっかけとしては「落ち着きがない」「忘れ物が多い」はADHDによく見られる特徴です。


ADHDは先天性の特性です。

子育ての仕方などが原因で発症するものではありません。

ADHDの原因は、今のところ明確なものはないですが、脳機能に何かしらの異常(=機能障害)などがあるといわれており、脳の機能障害は、ドーパミンとノルアドレナリンのバランス調整がうまくいっていないことが関係しています。

遺伝要因なども影響がありますが、脳の機能障害によって計画立てて行動することや、落ち着いて判断することなどが苦手になりやすいのです。


以前までADHDは「注意欠陥多動性障害」と言われていましたが、新しい診断基準(「DSM-5-TR」)では「注意欠陥多動症」といわれています。

診断基準には、ADHDの症状は一時的なものではなく常に現れ、生活に支障をきたすなどの基準が明記されています。

12歳以前にいくつかの症状が出現しますが、気づくのは成人になってからという人もいるようです。

以下では、ADHDの特徴・症状を詳しくご紹介します。

ADHDの特徴は、大きく分けて3種類の症状があるといわれています。

症状理解のために、まずは代表的な症状である「不注意」「多動性」「衝動性」と診断基準に関連する「優勢・混合」を解説します。


不注意の特徴は次の通りです。

・集中力が続かない

・授業中ボーっとしている

・宿題などの精神的努力を要する課題を避けたがる

・片付けや整理整頓が苦手である

・忘れ物やなくしものが多い

・気が散りやすい

・ケアレスミスが多い

・課題を最後までやりきれない

すべての症状に当てはまるわけではないですが、小学生の子どもだと「集中力が続かない」「忘れ物やなくしものが多い」「宿題を嫌がる」などの状態が見られやすいです。


多動性の特徴は次の通りです。

・じっと座っていられない

・自分自身の手足を触る、動かす

・くねくねと体を動かす

・静かに遊び続けることが難しい

多動性は動き回るイメージなど、落ち着かない様子の子どもが多いですが、次に紹介する衝動性と影響しあっています。


衝動性の特徴は次の通りです。

・相手の話の途中で遮る

・まとまりなく喋る

・順番を待てない

・身体が先に動き出してしまう

・気になったことを口に出してしまう

・イライラすることが多い

多動性と衝動性の特徴は互いに影響し合い、不注意の特徴が少ないと「多動・衝動優勢」といわれています。


ADHDには3種類ありますが、よく言われている「不注意」「多動性」「衝動性」のことではありません。

どの特性が優勢か、あるいは同程度かでADHDは以下の3つの種類に分けられます。

■不注意の特徴が強い→「不注意優勢」

■多動性と衝動性の特徴が強い→「多動・衝動優勢」

■不注意と多動性・衝動性の両方の特徴が出る→「混合(混合状態)」

筆者は普段、未就学児や小学生の子どもの親御さんから「うちの子はじっとしていられないけどADHDなんでしょうか?」という質問がよくあります。

心配になりますよね…。しかし、「落ち着きがない=ADHD」ではありません。

特に小学生で落ち着きがない子どもは、ADHDの可能性以外に次のようなパターンが考えられます。

・いろんなことに興味がある

・注目してほしい

・座り続ける体の発達が育っていない

・ストレスを感じている

・集団行動のルールが理解できていない

・集団行動に慣れていない

保育園や幼稚園での過ごし方の影響もあれば、興味関心や自己表現方法の違いなどもあります。

また、座り続けるためには体の傾きや回転などを感じる感覚(前庭覚)や筋肉・関節の運動に関する感覚(固有受容覚)が必要です。

ADHD以外に子ども個人の特徴を見ながら、どうすれば落ち着けるかなどを考えてみましょう。

グレーゾーンとは、一部の特性はあるものの診断基準は満たしていない状態のこと。

医学用語ではないですが、近年はとても有名な言葉になってきました。

私たちは誰もが、ADHDを含む神経発達症の特性が1~2つほどはあるものです。

さらに、人によって強く出る特性や弱く出る特性、全く出ない特性などグラデーションがあります。

不注意優勢の子もいれば、多動性・衝動性優勢の子もいますし、混合の子もいます。

見分けるポイントは一部だけを見ずに、子どもの特徴をさまざまな視点で見ることです。

なお、女の子のADHDは、不注意優勢が多いといわれていますが気づかれにくい子も多いので、気を付けてみてあげてくださいね。

小学生のADHDの子どもへの接し方を紹介します。

・取り組む姿やできているところを認める、褒める

・一緒に計画を立てて実行してみる

・宿題などは、楽しめる方法を探す

・忘れ物対策を一緒に試す

・友人トラブルに気を付ける

忘れ物対策は、こちらの記事を参考にしてみてください。

特に年齢が上がるにつれて、友人関係のトラブルも生じやすくなります。

ADHDの子どもはどちらかといえば、活発な子で人付き合いが好きな子の方が多いでしょう。

しかし、人が好きだからこそ特性が出たときにトラブルになることもあります。


低学年は「順番を守れない」「自分のやりたいようにやる」「イスにずっと座っていられない」などが起きやすいと考えられます。

宿題や提出物を忘れることも多く、先生から注意を受けやすい子もいるでしょう。

また、座っていても集中できない子もいるので、授業を理解できているか確認してあげるのもいいかもしれません。


高学年になると動きが落ち着く代わりに、関係性を保つためのコントロールが難しくなることがあります。

たとえば「思ったことをすぐ言ってしまう」「周りが見えずに集団から外れてしまう」「友達との約束を忘れる」などは、見られやすいです。

不注意優勢の場合は、忘れ物のほかにケアレスミスでテストの点数を落としてしまう子もいます。

親は、いつでも子どもの相談にのれるようにしておくこと、そしてトラブルやうまくいかないことが起きても怒るのではなく、寄り添いながら適切な関わり方や方法を伝えてあげてくださいね。

子どものADHDの治療法は、主に次のようなものがあります。

  • 環境調整
  • 薬物療法
  • ソーシャルスキルトレーニング
  • ペアレントトレーニング

まずは環境調整を行い、子どもが過ごしやすくなるように調整していきます。

薬物療法は、治すためというよりは症状の軽減の効果が期待されています。

症状が軽減することで、二次障害(うつ病など)のリスクも減るので、まずは医師に相談してみましょう。

ADHDの子どもは、大人に怒られることも多く、自分自身を嫌いになったり、自己肯定感が下がりやすいです。

まずは目の前にいる子どもの「ありのまま」を大切に見てあげてくださいね。

しかし、毎日一緒に過ごしていると、親の方もイライラしてきたり困ることが多いでしょう。

Gifted Gazeでは、経験豊富な臨床心理士や公認心理師がADHDの子育てオンライン相談に対応しています。

少しでも子育てに迷ったら、お気軽にお問い合わせください。

参考文献