
お子さんが発達検査や知能検査を受け、その結果説明のときに、「発達がゆっくり」というような説明を受けたことがある方もいらっしゃることでしょう。「ゆっくり」ということは、今はゆっくりな状態であったとしても、いつか追いつくことができるのか? そんな疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。実際に、私も親御さんへ発達検査や知能検査の結果説明をする際に「発達がゆっくり」という表現を用いて説明し、そのような疑問を投げかけられた経験もあります。
「発達がゆっくり」といった説明をする際に用いている指標が、発達検査であればDQ=発達指数、知能検査であればIQ=知能指数になります。厳密には、DQとIQは違うものにはなるのですが、親御さんがお子さんの発達状態を理解する上ではしっかりとした区別ができている必要はありません。
そのため、今回はIQと表現して説明させていただきますが、お子さんが発達検査を受けた場合の理解でも、ここからの説明は同じものと理解していただいて問題ない内容で記載させていただきます。
この記事を書いた専門家
日塔 千裕(ひとう ちひろ)
公認心理師・臨床心理士
発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。
この記事でわかること
- 知能指数(IQ)が示す意味と「発達がゆっくり」の基準
- 「発達がゆっくり」でも追いつける可能性はあるのか
- 年齢が上がってIQが上がる・下がるケースとその理由
- IQが固定化する時期と、検査を受けるタイミングの目安
- 親御さんが今できるサポートの考え方
目次
知能指数(IQ)が示すものとは?
IQ=知能指数と示した通り、知的能力を測定したものとなります。
では、そもそも知能とは何でしょうか。
知能とは、言語的能力や記憶力、空間認識力など包括的な能力となります。そして、ただ記憶したり認識したりということだけでなく、それらを活用してどう応用的に考えることができるか、抽象的に俯瞰して物事を捉えることができるかなどのさまざまな問題解決の土台となる能力も含めているものが、知能です。
IQの基準
IQは、100を標準として、同年齢集団と比べて標準的な水準に位置しているのか、低いのか、高いのかということを測定しています。
概ねIQ 80〜120に位置していれば標準的と言われます。
80よりも下回っている場合に、「発達がゆっくり」と表現されることがあります。
「発達がゆっくり」のQ&A
お子さんの年齢が乳児〜幼児期前半で発達検査などを受けての結果であれば、発達の個人差が非常に大きい時期のため、そのときの結果は数値が低くても、1〜2年後に再度検査を受けると標準範囲内におさまっているという可能性もゼロではありません。
一方で、同じ程度の水準の数値に位置している可能性ももちろんあります。
幼児期後半以降に受けた結果の場合には、その後、同年齢集団の標準に追いついて、標準的な位置まで上がるというのは、結構難しい状況ではあります。
“追いつく”ということは、同年齢集団が12か月で成長するペースを、1.5倍のペースで成長しなければならないなど、ハイペースでの成長を遂げて初めて”追いつく”という状態になります。人の成長ペースの原則的な側面から考えて、幼児期後半以降にIQが同年齢集団に追いつくというのが難しいと言えるのです。
ただ、1年後、2年後などお子さんの年齢が上がって、再度知能検査や発達検査を受けて、IQ(またはDQ)が同じ程度の数字になっていれば、同年齢集団に比べて低い水準に位置しているが、ペースは同じ状態で、お子さんなりの成長を遂げていると言えるのです。
IQが上がるということは、1年(12か月)の成長で考えた場合、同じ年齢の子たちが12か月分の成長をしている中で、それよりも速いペースで成長することでIQが上がるという結果になるのです。
乳児期から幼児期前半までは、はじめはゆっくりと途中から急激に成長するといった成長を遂げるお子さんもいるため、IQが上がることもあります。一方で、幼児期後半頃からは、そのような成長を遂げる割合の子は減っていきます。
お子さんがある程度、大人からの指示に応じて取り組む力を持っているかどうかも重要です。大人からの指示に応じる力が弱く、座っていられなかったり、指示に応じず自分のやりたいようにやることが多かったりする場合には、的確なIQ(またはDQ)を測定出来ているとは言えません。
その時点で、日常生活上、発揮できる力はそのときに測定されたIQ(またはDQ)に準じる能力と考えて、サポートやトレーニングなどを考えていけるとよいでしょう。
トレーニングを重ねていき、年齢が上がると、大人の指示に応じる力が高まり、検査の課題に取り組むことができるものが増える可能性があります。そうすると、知能検査や発達検査の結果としてのIQ(またはDQ)も上がるという結果になることもあり得ます。概ね幼児期後半から小学校低学年頃のお子さんに関しては、このようなケースに該当する場合もあります。
「9歳の壁」や「10歳の壁」などの言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。だいたい小学校3〜4年生頃に1つの壁と言われている状況があるのです。
学校で習う学習内容を思い浮かべてみてください。特に分かりやすいのが算数かと思います。万の位など大きな数や、わり算、小数、分数、図形や重さ、時間など抽象的な概念を求められる内容が、1〜2年生のときに比べて一気に増えてきます。国語でも同様に抽象的な内容の読み取りや漢字の画数も増えるなど難易度が上がります。
小学校3〜4年生の時期というのは、このように抽象的な概念の思考を求められてくる時期になるのです。
そのため、この時期に応用的に考えることができるか、抽象的に俯瞰して物事を捉えることができるかといったスキルがしっかり獲得できているかどうかによって、IQが維持されていくか、IQが下がるかが変わってくることがあるのです。
特に低年齢でIQが低かった場合、この時期を上手く乗り越えることが難しいという影響を受けやすいことが多いです。小学校低学年や中学年の時期でIQが80より下回っているお子さんに関しては、小学校高学年頃には再度、知能検査を受けることをおススメしています。その後の結果によって、その後のサポート体制や進路等を検討した方がお子さんにとっても、親御さんにとってもよいと考えているからです。
もちろん、事故での頭部外傷や病気による脳へのダメージなどを受けた場合は別ですが、そのようなことが何もない場合には、そのように言われています。
そのため、IQが低い場合、小学校6年生頃までは2〜3年に1回程度は知能検査を受けて経過を確認できるとよいでしょう。
小学校6年または中学1年頃で知能検査を受けたら、原則的には概ねその結果を踏まえて進路やサポート体制などを考えていけるとよいでしょう。
おわりに
IQ(またはDQ)が上がるのか、今後、同じ年齢の子どもたちに追いつくことができるのかというのは、親御さんにとって切実な悩みかと思います。
心配は当然のことだと思います。
お子さんへのサポートやトレーニングを適度に行いながらも、親御さんが焦りすぎず、お子さんの成長を見守る姿勢もとても大切です。
参考情報・監修について
- Wechsler, D. ― WISC-V(ウェクスラー式知能検査)
- 田中教育研究所 ― 田中ビネー知能検査Ⅴ
- Kaufman, A.S. & Kaufman, N.L. ― KABC-II(カウフマン式知能検査)
本記事は上記の知見をもとに、公認心理師・臨床心理士が監修・執筆しています。お子さんの発達についてご心配がある場合は、専門家にご相談ください。


