HSPとは、”人一倍繊細・敏感な人”と訳される気質のことです。
Highly Sensitive Personの頭文字をとって、HSPといわれています。
子どものHSPは、大人以上に「自分の性格の問題」「自分(うちの子)だけが違う」と捉えやすく、不登校や生きづらさにつながってしまうのを知っていましたか?
今回は、子どものHSPの特徴、親がHSP気質の子どもにできることや、本人も工夫していく方法を臨床心理士が紹介します。
この記事を書いた専門家

いけや さき
公認心理師、臨床心理士
精神科病院、療育施設、心療内科・児童精神科クリニックなど主に医療と福祉領域にて心理士として従事。発達障害の子どもたちや保護者、女性のメンタルヘルス等のサポートを行いながら、webライターとしても活動中。
子どものHSPとは?
子どものHSPは、HSC(Highly Sensitive Child)ともいわれています。
HSPのことをすでにご存じの方は、そのHSPの子どもバージョンと捉えて問題ありません。
ここでは、HSPのことを詳しくは知らない人や子どもによくある特徴を知りたい方に向けてお話します。
HSP・HSCは病気ではない
HSP・HSCは病気ではなく、生まれ持った気質です。
今、悩みや困っていることがなければ、治療をする必要はないでしょう。
HSPを提唱したアメリカの心理学者であるエイレン・N・アーロン氏によれば、5人に1人はHSP・HSC気質を持っているといわれています。
小学校のクラス内にも、HSCの子どもが程度は違っても数人いるということです。
HSP・HSCは細かな特徴に違いはありますが、次に紹介する4つの特徴には必ず当てはまっているといわれています。
HSP・HSCの4つの特徴【DOES(ダス)】
4つの特徴の頭文字をとって、DOES(ダス)といいます。
ここでは、DOESの特徴をご紹介します。
【D】Depth of processing:物事を深く考える
・1つの情報に対してさまざまなことを想像し、深く考える
・必要以上に考えて疲れやすい
・想定しすぎて取り組むのが遅くなることがある
・多様な観点を活かして、相手のお世辞や愛想などを見抜く力がある
・哲学的な深い思想に関心を持ち、浅い話が苦手
【O】Overstimulation:刺激を敏感に受け取る
・五感で人一倍キャッチしやすく、非常に繊細で敏感
・音や光、におい、気候、人混みなどに過剰反応しやすい
・楽しい時間を過ごしても、帰宅すると一気に疲れが出る
・芸術作品に感動しやすい
・些細な変化に気づきやすい
【E】Emotional response and empathy:共感力が高い
・他人が注意されているのを見るのがつらい
・周囲の雰囲気や感情をくみ取り、自然に合わせてしまう
・映画やドラマ、本、漫画などに感情移入しやすい
・言葉が通じない相手(幼児や動物)の気持ちを察することができる
【S】Sensitivity to subtleties:感覚が鋭い
・カフェインや添加物が苦手になりやすい
・第六感が働きやすい
・手触りや肌触りで合わないものがある
・音や光、においの強さで不調になりやすい
敏感なHSCによく見られる特徴
HSPの子ども(=「HSC」)に見られやすい特徴をまとめました。
☑ ちょっとしたことですぐに驚く
☑ 直観力がすぐれている
☑ 完璧主義なところがある
☑ 他人の苦しさや悲しみに気づきやすい
☑ にぎやかな場所が苦手
☑ 静かな遊びを好む
☑ 同世代と好みが違うことがある
ほかにもさまざまな特徴があります。
詳しくは、アーロン氏公認の日本語版サイト※1や書籍などを参考にしてみてください。
繊細なHSPの子どもは悩みやすい
「エリクソンの発達段階」によれば、学齢期(小学生)は他人と比較し、劣等感を感じやすい時期といわれています。
HSPの子は、繊細な気質を持っているためより一層悩みやすいのです。
HSPの特徴は、決してネガティブなものではなく、活かせれば長所にもなるもの。
親は子どもの特性を理解し、個性の1つと捉えてあげましょう。
HSPの子どもは、ほかの子が怒られているのを見るだけでも苦しくなります。
怒られている子の姿を見て、「自分は気を付けないと」「親(先生)に迷惑かけないようにしないと」と必要以上に空気を読んだふるまいをする子もいるのです。
他人の顔色をうかがったり、嫌われていないのに嫌われないように本来の自分を隠す子もいます。
親から見ると「聞き分けのいい子」「育てやすい子」と感じる子が、HSP(HSC)の可能性があるのです。
良い子が悩まないわけではありませんので、子どもの個性を見てあげてくださいね。
親ができるHSPの子どもへの対処法
HSP気質の子どもは、突然もしくは自分のことを話そうとすると涙が出たり、感情のコントロールできなくなることがあります。
コントロールできなくなる理由の1つは、ため込んでいるから。
ここでは、親ができるHSPの子どもへの接し方を紹介します。
対処法①気質を受容する
前半で紹介したDOESを含めたHSPの子どもの特徴・気質を理解しましょう。
加えて、子ども本人の個性も理解することも大切です。
気質を受容したうえで、子どもの自主性や価値観を尊重しながら関わりましょう。
対処法②味方であることを伝える
HSPの子どもは、必要以上に自分の価値や立ち位置について考えます。
必要とされているのか、自分がどう振舞えば周囲は喜ぶのかを考えることは、HSPではない子と比べると考える頻度は多いといわれています。思考が深いため、日常の楽しい話よりもちょっと大人びた話の方が好きなのです。
でも友達とは話が合いにくくなり、自分がおかしいのではと思うこともあります。
「子どもらしく」と考えず、子どもの一番の味方であることを伝え、相談しやすい関係性をつくりましょう。
対処法③環境調整をする
HSPの子どもにとって、「学校」は疲れる場所です。
楽しいけど疲れる子もいれば、楽しくないし疲れる子もいます。
義務教育ですので、登校を拒否していなければ行ける方がいいですが、HSPの子には次の環境調整をおすすめします。
・担任と相談し、自主学習の場をつくる
・休み時間は図書室や保健室など、静かな場所で過ごす
・集中しやすい環境を本人と相談する
ほかにも、学校が終わった後の過ごし方で調整することもできます。
この記事の筆者はアーロン氏のHSPチェックリスト(大人版※2)にすべて当てはまっていました。
HSPと気づいたのは数年前ですが、子どもの頃は友達のことは好きだけど、休み時間は図書室で過ごしていました。
友達付き合いは頑張ってたので、周りは私が悩んでいたことは気づいていないと思います。
ただ、ため込みすぎて時々急に泣いたり怒ったりしたときは、周りはびっくりしていました。
学校が嫌いではなかったけど、周りに合わせて話すことがストレスになることもあったと今でも覚えています。
対処法④専門家に相談する
専門家に相談することは絶対ではないですが、今こうして記事を読んでいるということは悩んでいるのではないでしょうか。
HSPは遺伝と環境の両方が関係しているため、親御さんのなかにはHSP気質を持っている方もいるかもしれません。
HSP気質を持つ親も、そうではない方も一人で抱えていませんか?
Gifted Gazeでは、医師や心理士のオンライン相談もご用意しています。周りをもっと頼っていっていいのですよ。
子ども本人も一緒にできるHSP症状への対処法
子ども本人ができる対処法を見つけることも、親子がつらくならないために重要です。
対処法①敏感になりやすいものを知る
同じHSPでも、敏感になりやすいものには違いがあります。
光の強さが苦手な子もいれば、音に敏感な子もいるでしょう。
子どもと話しながら、敏感になりやすいものを一緒に探してあげることで、具体的な対処法を考えやすくなります。
対処法②強みを活かす
HSPに限らず、どの子どもにも強みはあります。
子どもの強みを見つける方法はさまざまですが、当サイトでは「ギフテッド診断」というものをご用意しています。
「ギフテッド診断」は多重知能理論(MI理論)やビックファイブ理論と言った、研究に基づいた理論を用いた子どもの輝かしい個性を見つける手段です。
一般的な心理検査とは異なる視点で、子どもの個性を見つけ出すことができます。
少しでも今より過ごしやすくなるために
HSP・HSCは病気ではありません。
しかし、生きづらさを人一倍感じやすい「繊細さん」であることから、心の病気にもなりやすい特徴を持っています。
子ども一人ひとりの個性を大切にしながら、親御さんも無理なく子どもと関わっていきましょう。
Gifted Gazeは、子育て相談を受け付けています。どんなお悩みでも大丈夫です。一人で抱えず、お気軽にご相談ください。
参考