ASD(自閉スペクトラム症)とは?具体的な特徴、診断の受け方やサポート方法について詳しく解説【小中学生編】

「うちの子、ちょっと周りと違うかもしれない…」

「こだわりが激しすぎる…」

学校での集団生活やお友だちや先生との関係、日常生活の中で、他の子どもたちとは少し違う行動や特性が見られることは珍しいことではありません。

成長の過程で、そのような特性が自然に解消される場合もありますが、もしその特性が「ASD(自閉スペクトラム症)」によるものだったとしたら、早めに理解し適切なサポートをすることが、子どもが心地よく成長していくために有用です。

ASDの子どもたちは、独特な個性や考え方を持ち、周囲との関わり方や日々の行動に独自のパターンがある場合が多いです。

そのため、戸惑いや悩みを抱える保護者の方も少なくありません。

この記事では、ASDとは何か、具体的な特性や困りごと、病院での診断や相談先、家庭や学校での具体的な向き合い方について、わかりやすく解説します。

ASDは「Autism Spectrum Disorder」の略で、日本語では「自閉スペクトラム症」と訳されます。

「スペクトラム(連続体)」という言葉が使われるのは、ASDの特性は一人ひとり異なり、軽度から重度までさまざまな程度(グラデーション)があるからです。

ASDの特性は、脳の発達に関わる特性が原因で、以下のような特徴が見られます。
具体例も合わせてご紹介しています。

なお、これらの特性があるからといって”ASDである”と言えるものではなく、ASDの子どもに見られる特性で多いものをご紹介しています。

  • 友だち関係を築いたり維持したりするのが苦手
  • 考え方が直線的(言われたことをそのまま受け取るなど)
  • 一方的に話をするが、相手の話は聞かない
  • 何かを要求する時は”自分言葉”(「〜してほしい」ではなく「頭が痛い」と状態を伝える、など)
  • 音が大きすぎるとパニックになる
  • 痛みに気づきにくいこともある
  • 長袖を着るのを嫌がる、年中はだしでいたがる
  • 日常のルーチンが崩れたり、予定が変更になると激昂するなど感情的に不安定になる
  • 興味のあることには集中できるが、興味がないものは目もくれない
  • 大事にしているものや夢中になっているものを取り上げると激怒する
  • 自分のやり方やルールへの執着が強い

ASDとなる原因については、完全に解明されていないというのが現状です。

もちろん、親の行動や家庭環境によって引き起こされるものではありません。

ASDの原因は単一ではなく、遺伝的要因、環境的要因、脳の発達に関わる要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

そのため、ASDの子ども一人ひとりで特徴が異なるのです。

どの要因が強く影響しているかは、個々のケースによって大きく異なります。

上でご紹介したような特性があるため、学校生活では、集団行動や授業への集中が難しかったり感情表現が激しかったりして周囲から「わがまま」や「変わっている」と誤解されることもあります。

まずは、ASDの行動パターンによって分類をご紹介します。

ASDの子どもは、その行動のタイプから大きく以下に分類されます。※1

①見たことをまとめるのが苦手なタイプ

②聞いたことをまとめるのが苦手なタイプ

③注意力/集中力がないタイプ

④実行機能が弱いタイプ(こだわり、興味の凸凹、ルールに厳しい、挨拶をしないなど)

他にも、熟考しすぎる(質問に答えるのに時間がかかる、行動するスピードが遅い、会話がゆっくり、板書がゆっくりなど)タイプや簡単な作業が極端に得意なタイプがあります。

早期にASDあるいはASDの傾向があるとわかることで、支援のプランを立てやすくなります。
ASDによる問題行動が深刻な場合は、専門的な支援が早ければ早いほど、子どもの適応力を伸ばすことができると考えられています。

◯ 病院での診断

まず相談先として思い浮かぶのは病院でしょう。

ASDの特性は、生後2年目にあらわれる場合が多いとされ、早ければ1歳半検診の時に”ASDの傾向がある”などと気付かれる場合もあります。

気になる特性がある場合、かかりつけ医や学校のスクールカウンセラーに相談し、児童精神科・小児神経科、小児科、発達外来の受診を勧められることもあります。

通常は、そのような専門医を受診しASDの診断を受けることになります。

診断のプロセスとしては、子どもの行動観察や親へのヒアリング、質問票を使ったり、知能検査/心理検査や発達検査を行うこともあります。

ただ、ASDの中核症状に対する薬は現時点ではないため、ADHDの特性と重複している症状が日常の困りごととして出ている場合は、ADHDの症状に対する投薬として対処することが一般的です。※2

◯ 支援機関

病院以外にも、以下の相談機関を利用することができます:

◾️学校:担任、スクールカウンセラー、特別支援教育コーディネーターなど
◾️地域の相談窓口:児童相談所、発達障害者支援センターなど
◾️民間支援:放課後等デイサービスや療育センターでのプログラムなど

詳しい相談先はこちらの記事もご覧ください。

ASDをもつ親御さんは、学校生活での適応状況や日常のこだわり、感情表現の仕方を見ていると不安になったり「扱いにくいな」と感じることもあるかもしれません。

ASDの特性は、「できないこと」として捉えるのではなく、その子の個性のあらわれの一つとして捉えることが大切です。

「変わっているな」と思うようなこだわりも、「専門性の芽」であるし、サポートの仕方や声掛けを工夫することで子どもも親も過ごしやすくなります。

先の「具体的な困りごと」でご紹介したように、ASDには行動タイプがあります。

どのような行動タイプかによって当然対処法が異なりますが、それぞれの対応方法を以下に簡単にまとめました。

周りの大人が、子どもの行動をよく観察した上で、サポート方法を検討することが重要です。

ASD行動タイプ別の支援の方法

①見たことをまとめるのが苦手なタイプ

  • 板書だけでなく手元の資料を用いる/タブレットなど板書の写真撮影を認める
  • イラストや色分けなどを用いて説明する
  • 図やグラフなどは抽象的な言葉を使わず、分析結果をきちんと言語化する

②聞いたことをまとめるのが苦手なタイプ

  • 授業などは、全体の流れを予め図示しておく(視覚情報を提供する)
  • 発表/発言内容をまとめて、それを見ながら発表することを勧める
  • 口頭での指示の内容はメモを取らせる
  • 聞き取りが追いつかない場合は「もう一度言ってほしい」ということをはっきり伝えるよう促す

③注意力がない/集中力がないタイプ

  • 今何をすべきかを明確に伝える
  • ルールやスケジュールは、復唱させたり書面にして渡す(メモ帳なども合わせて活用する)
  • 我慢できずにルール違反した場合は、再度ルールの説明・確認を行い、理解したかを確認する

④実行機能が弱いタイプ

  • ルーチンやルールを決める(毎日のスケジュールを明確にしたり、それでも守れない場合は見直すことを検討する)
  • メモ帳や付箋などを活用して優先順位を視覚的に整理し、理解させる(アラームなども合わせて活用する)
  • 感情の言語化を手伝う
  • どんなことにどれくらいのストレスを感じるかを言語化させ、解消のパターンを決めておく

学校とは、定期的にコミュニケーションを取り、子どもの状態や家庭での様子を共有しましょう。
保護者と学校が連携して子どもに合った学びの環境を提供できるとベストです。

しかし残念ながら、現代の教育現場においては、全ての学校/先生たちがASDをはじめとする発達凸凹のある子どもやその環境配慮に関して十分な理解がある状況とはいえません。

子どもにとって安心して学べる環境をどのように調整すべきか、子どもの状態や発達に合わせたサポートの方法と必要性を話し合っていくしかないというのが現状です。

ご紹介したように、ASDの子どもはその特性から家庭や学校で困りごとを抱えている場合が多いです。

とはいっても、ASDの特性はユニークな才能の表れです。

本人が進んで取り組んだり没頭していることは才能の一つの表れと捉えて、得意な分野で体験を積み重ねることもいいことだと理解しておきましょう。

特性にあった向き合い方のヒントになればと思います。

子どもの発達特性や日常の行動について気になることがあれば、どんな些細なことでもGifted Gazeの専門家にご相談いただければと思います。

参考文献