発達障害に関する相談はどこにすればいい?病院や相談機関の使い分けとは

「うちの子、発達障害・・・?」など、発達障害を疑ったり気になっていたりする場合、どこに相談したら悩まれる親御さんは非常に多いです。

病院や相談機関での相談、医師や心理士への相談など、どう選んだらよいのか、どう使い分けたらよいのか、分からないという方は多いことでしょう。

これまで相談を受けてきた中で、親御さんが疑問に思っている方が多かったことに関してお答えしていきたいと思います。

この記事を書いた専門家

日塔 千裕


公認心理師、臨床心理士

発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。

発達障害ではないかなどと感じている場合、病院に行かなければならないと思っている方は多いように感じます。

ただ、必ずしも病院を受診しなければならないというわけではありません。

発達障害かどうかが気になっているという状況の中で、親御さん自身が悩んでいるポイントは何でしょうか。

大きく分けると2つの方向性に分けられると思います。

①と②の両方とも同じくらいの気持ちという方もいれば、どちらか一方が特に強いという方もいるでしょう。

以下でそれぞれの場合を見ていきます。


まず、①に関しては、要は発達障害かどうか、はっきりとした「診断」がほしい場合かと思います。

この場合は、発達障害を診ている病院を受診する必要があります。

診断ということになると、医師しかできないので、病院受診が必要です。


続いて②に関しては、相談機関への相談をお勧めします。

状態を理解するという点に関しては、心理検査を受けるという方法もあるため、その場合は①のように病院を受診することで心理検査が行われる場合もあります。

ただ、より具体的に日常生活での困りごとにどう対処するかという相談に関しては、相談機関をご利用いただくのがよいです。

ポイントは、発達障害かどうかの“診断”を求めるのか、それよりも優先してお子さんへの接し方・対応方法を考えていきたいのかです。

まずは親御さん自身がどちらを求めるのかで、相談先を考えてみてください。

もちろん、病院を受診して、その後、相談機関へ相談をする。
まずは相談機関へ相談してみたけど、相談を継続する中で病院受診をしようと考えた。

など、途中で、もう一方へ移行したり、両方を平行して利用するようなこともあってよいのです。

病院と相談機関の両方で相談を進めるのは大変ではあると思いますが、お子さんの状態によっては、うまく両方のよいところを活用しながら相談を進めることの方が、親御さんの悩みが軽減される可能性を高めることに繋がることもあります。

お子さん自身の年齢が高く、お子さん自身が自分のことを理解したいということが目的であれば、心理検査という客観的な情報とともにお子さんに直接説明をしてもらえる病院を受診するということも方法です。

繰り返しになりますが、発達障害かどうかの診断は医師しかできないため、診断を求める場合には病院への受診が必要です。

「発達障害ではないかと気にはなっているけど、自分の子どもが発達障害だと認めたくない…」

こんな気持ちで揺らぐことも自然な反応でしょう。

基本的に、発達障害かどうかの診断を受けて終わりということはないと思います。

親御さんが発達障害かどうか気になっているということは、何かしらお子さんの発達や行動に心配なところがあったり、対応に苦慮していたりなどの悩み・困りごとがあるはずです。

そのようなことに対しては、発達障害かどうかの診断を受けたから解消されるというものではありませんよね。

診断を受けることで親御さんに有益となるようなポイントとしては、保育園・幼稚園・学校の先生などお子さんの生活に密接にかかわる周囲の方たちに説明をする際の導入として、話しやすくなるということでしょう。

また、親御さん自身の気持ちとして、はっきり分かったことでモヤが晴れるようなスッキリした、今までのお子さんの言動が腑に落ちたなどと言われた方もいらっしゃいます。

ただ、同じ診断名であっても、お子さんが示す言動やお子さんにとって必要な関わり方などは、お子さんそれぞれによって異なります。

診断名だけでお子さんの状態すべてが把握できるわけではなく、あくまで親御さん自身の理解や周囲への説明への一助とお考えください。

つまり、お子さんの発達や行動に心配なところがあったり、対応に苦慮していたりなどの悩み・困りごとに対しては、診断名が分かったうえで、関わり方・対応方法などを相談していくということがあった方がよいのです。

発達障害がある、またはその可能性(疑い)があるようなお子さんの行動に関して、主たる相談者としては医師と心理士(臨床心理士・公認心理師)が挙げられます。

ただ、相談機関であれば、心理士以外の専門職の方々が相談に応じることもあります。

お子さんの行動面の相談に関しては、基本的に一度相談して、その時の助言を実施してみてすぐ解決という魔法のような対応は、今のところ残念ながらありません。

そのときのお子さんの状態、親御さんの状態、それらを取り巻く周囲の状況…とさまざまな複合的要因が絡み合って、お子さんの行動に繋がっています。

「ある時はこの対応でうまくいき、別のときに同じ対応をしてもうまくいかなかった…」なんてことは日常生活において多々あることです。

「こんな状況で、こう対応したら、子どもの行動はこんな状態で…」と繰り返し相談を重ねながら、対応方法を微調整しつつ、対応方法のレパートリーを親御さん自身が広げていくことが大切なのです。

ある場面で、Aの方法を試してみて、うまくいかないからBの方法を。それでもうまくいかないからCの方法を。

その場面でCの方法でうまくいったから、次の別の場面で、Cの方法をしたけどうまくいかない。

じゃあ、Bの方法を。それでもうまくいかないから、Aの方法をしてみたら、うまくいった。

日常生活の中では、常に同じ対応でうまくいくことばかりではなく、場面によってヒットする対応方法が変わってくることが多くあります。

そんな状況に親御さんとしては辟易することもあるでしょう。

対応を一緒に考えてもらうとともに、親御さん自身の気持ちを吐き出せるなど、寄り添ってもらえ、親御さん自身が「やってみよう!」などと少しでも前向きになって日常生活に戻ることができる相談者を見つけることが大切となります。

人と人との相性もあるので、完璧に自分に合った相談者を見つけるということは難しいと思いますが、親御さん自身が欲しいと思っている情報をわずかでも提供してくれるか、疑問や不安等に一部でも応えてくれるかということで選んでいただいてもよいでしょう。

このような観点では、医師か心理士か、どちらでなければいけないということはありません。


一般的には、心理士との相談の方が30分や1時間など枠組みがあって、長めの時間で相談時間を取っていることの方が多いです。

医師でも1人30分など時間を取っているところもないわけではありませんが、多くのところでは短い時間での診察となっており、ゆっくり日常生活の困りごとを話すことはできないところが多いのが現状です。

そのため、先述のような相談を希望される場合には、心理士との相談がおすすめです。


一方で、お子さんの状態によっては、投薬治療が効く場合もあります。

著しい不注意や激しい行動、感情コントロールが極端に苦手など、深刻な不適切行動がある場合は、薬の力も借りながら、親御さんなど周囲の人の接し方の工夫も行っていくことが有効な状態の場合もあります。

薬の適用となるかどうかの判断は医師しかできないため、お子さんの状態によっては投薬も視野に入れて考えるとすると医師への相談をする必要があります。

投薬も、一般的な解熱剤などのように飲んだらすぐに効果が出てくるというものとは少し事情が違います。

すぐに効果が出る薬もあれば、数か月間様子を見てじわじわと効果が出てくる薬もあります。

お子さんの状態によって、どちらの薬が適用になるかは変わりますし、お子さんの身体と薬との相性で副作用が出たり効き方が異なったりするため、経過観察をしながら薬も微調整してお子さんの身体・状態に合わせていく必要があるため、診察を重ねていく必要はあります。

発達障害ではないかと気になっている場合の相談先として、病院や相談機関、医師や心理士など複数ある相談場所からどう選んだらよいのか、どう使い分けたらよいのかという目安をお伝えさせていただきました。

考え方の1つの指標として参考にしていただけたらと思います。

地域によっては選択肢が限られている状況もあると思いますが、複数ある相談機関からどう選ぶとよいのかということに関しては、こちらの記事でメリットやデメリットとともにご紹介していますので合わせてご覧ください。