ご褒美

「ご褒美をあげないと何もやらなくなるのではないか」

と心配する親御さんが増えています。

特に小さなお子さんを育てている家庭では、この問題は日常的な悩みの一つです。

この記事では、ご褒美が子どもの行動に与える影響や、適切なご褒美の使い方について詳しく解説します。

ご褒美を上手に活用して、子どもの自発的な行動を引き出す方法を一緒に見つけましょう。

この記事を書いた専門家

日塔 千裕


公認心理師、臨床心理士

発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。

「ご褒美は有効なんですか?ご褒美をあげないと何もやらなくなるのではないでしょうか」

特に低年齢のお子さんを育てている親御さんからのご相談で聞かれる心配事です。

最近は、大人が自分へのご褒美と言われることも増えていますが、お子さんにご褒美をあげることに関しては、ご褒美がないと何もやらない子になるのではないかと心配される親御さんは多いです。

ご褒美

もちろん、そうならないリスクがゼロというわけではありません。

ご褒美を何とするか、どんなことに対してご褒美をあげるのか、ご褒美のあげ方によって、ご褒美がないとやらない子になるか、そうはならないかが変わってきます

何でもかんでもすべてにおいて、「がんばったからどうぞ」とご褒美的に子どもの好きなものを与えていれば、(当然ですが)ご褒美ありきの行動で、ご褒美がないならやらない、「これやってほしいなら〇〇ちょうだい」と欲しいものを要求してくるとなるでしょう。これは単なる甘やかしですね。

多くの場合は、部分的な場面でのご褒美であって、ご褒美がなくても取り組んでいる場面もたくさんあるはずです。

このような状況であれば、ご褒美がないと何もやらないという子にはなりません。

ご褒美のあげ方には、もちろんいくつかの注意点はあります。

この記事でお伝えするご褒美は、お子さんの適切な行動を引き出すためのご褒美です。

たとえば、日頃の学校のテストで50点前後しか取れていない子どもに対して、80点取れたらご褒美というのは無茶です。

いつもあと一歩、ケアレスミスで80点に一歩足りないというお子さんであれば、見直しのやり方を教えて、80点取れたらご褒美という設定はありでしょう。

ただ、もっと言えば、結果よりは、プロセスに注目して、ご褒美をあげる行動を設定することが望ましいです。

ご褒美

テストは1ヶ月や数か月に1回です。

それよりは毎日の行動で、宿題に取り組むとか、宿題とは別の自主学習に取り組めたらなどの頻度の高いもので設定できるとよいでしょう。


以下では、お子さんの適切な行動を引き出すためのご褒美をどうやって決めるのか、ポイントを解説しています。

まずは、できている行動の頻度をあげることを目的に設定することです。

そもそも全く取り組めていない・できないものをできるようにすることを目的としてご褒美を設定してしまうと、ご褒美がモチベーションにならず、取り組む意欲の低下につながるリスクがあります。

その行動を行うスキルとしては持っているけれど、まだ習慣化ができていない、何度も声掛けて最終的に一緒に取り組まないとできないなどのような行動を、少しでもスムーズに取り組めるようにするためのご褒美として設定しましょう。

そして、この設定する行動においても注意が必要です。

「◇◇する」と、行うべき行動で決めてください

ご褒美

これはしてほしくないからと「△△しない」という表現ではなく、△△せずに何をしてほしいのかを考えてみましょう

そして、「◇◇する」の表現に変えて、それができたらご褒美という形にしてください。

その決めた行動ができなかったからといって、×をつけることは必要ありません。

できなかったことには注目せず、できなかったら何もせず、できたときに○をつける(ご褒美をあげる)という意識で対応してみましょう。

次に、ご褒美の基準は明確にすることです。

例えば、お父さんのときはご褒美をもらえるけど、お母さんのときはもらえないなど人によって変わってしまうと、お子さんの適切な行動を引き出すためのご褒美としてのご褒美の効果が薄らいでしまいます。

そのため、これをがんばってほしい、やってほしいという行動へのご褒美とするには、ご褒美をあげる基準が明確で誰から見ても判断が同じになる必要があります。

ご褒美

たまにしか頻度がない病院受診の場合に、「静かに待てたから」「予防接種をがんばって受けられたから」とか、「法事で静かにできたから」など低頻度のもので本当にお子さんががんばっていたことに対して、そのときの状況でご褒美をあげるというのはOKです。

ここでお伝えしているような、毎日など高頻度で起こる状況でお子さんの行動を引き出すためのご褒美の時は、「この行動ができたらご褒美がある」という基準を決めておきましょう

そして、基準を明確にする際に、「〇〇ができたらご褒美」の〇〇は、3~5つ程度の行動にしましょう。

多すぎると、全部が中途半端になり、何もできず、ご褒美をもらえる機会がなくなる可能性があります。

また、何ができていたか、何ができなかったかの確認も親としても分からなくなってしまうため、結局、ご褒美をあげるタイミングが分からなくなり、ご褒美の効果がなくなってしまいます。

把握・確認しやすい数として3~5つの行動・基準としておくことが望ましいです。

何に対してご褒美をあげるのかという行動の設定方法をお伝えしましたが、ご褒美を何にするかというご褒美の内容も大切です。

ここからは、ご褒美の内容に関するお話をしていきます。


繰り返しになりますが、ここでお伝えしているご褒美は、お子さんの適切な行動を引き出すためのご褒美なので、日常の中で高頻度でご褒美の出現があるわけです。

そのご褒美に高価なものを与えていては、家計が破綻してしまいます。

家計に無理のない範囲の、お菓子が1つ増えるとか、○円以下の好きなお菓子を買ってよいとか、安価なものをご褒美として設定しましょう。

ご褒美

安価となるかどうかは分かりませんが、食べることが好きな子なら夕飯のメニューをお子さんの希望のものにするというのも方法でしょう。

平日は仕事もあってそんな余裕はないという場合には、事前に休日のメニューとして伝えておくとよいです。

メニューを考える手間も省けて一石二鳥かもしれませんね。

その際、その日だけは栄養バランスは無視して、お子さんの希望するままに作ってあげられると、よりご褒美としての意味が強くなります。


必ずしも物を与えることばかりがご褒美ではありません。

ゲームの時間を1時間など決めているのであれば、30分延長という時間をご褒美とすることもOKです。

場合によっては、金曜の就寝時間を30分遅くすることがご褒美としてもよいでしょう。

お子さんの興味によって安価となるかは分かりませんが、お子さんが行きたいところに出掛けるということをご褒美とすることも方法です。

ご褒美

物質的なものではなく、そこでする体験自体がご褒美となります。


1つの好ましい行動を行ったからすぐご褒美というばかりではなく、1回行うごとにポイントを貯めていき、何ポイント溜まったらご褒美というポイント制にする方法もあります。

表を作っておき、できるごとに○や日付を書いていく。あるいは、シールを貼っていく。

年齢が低いお子さんであれば、シールを貼ることがご褒美となることもありますので、好きなシールを買って、できたらお子さんにシールを1つ貼ってもらう。

シールが溜まったら、少し大きなご褒美が待っているとすると分かりやすいでしょう。

ご褒美

年齢が高いお子さんの場合は、あくまで視覚的に確認するツールとしての活用であり、親子の共通認識ができるものとして分かりやすく記載できていればOKです。


ご家庭によってどの値段以上を高価とするかは変わってきますので、ご家庭の状況に合わせて決めていただければ大丈夫ですが、高価なものは、誕生日やクリスマスなどのイベントごとのみにしましょう。

体験をご褒美とする場合、入場料や旅費などで高価となる場合には、夏休みや春休みなどの長期休暇のご褒美とできるとよいでしょう。

長期休暇の期間以外の土日や連休でのお出掛けをご褒美とする場合は、入場料や移動費を含めて○円以内などの決まりを設けておくことも方法です。


子ども自身のこと、宿題など勉強に関する行動や子ども自身の身の回りのことに関する行動においては、ご褒美としての設定は先に説明したような安価な物や時間、体験としましょう。

ご褒美とは若干異なりますが、家族にも関係する家事手伝いに関すること、お風呂掃除、洗濯ものの取り込みや洗濯物たたみなどの行動に関しては、1回〇〇が△円、など、お小遣いとして金額を設定するのもOKです。

家庭の中で子どもにも役割を与え、仕事としてお金を稼ぐという経済観念の育成に繋がります。

お小遣いすべてを家事手伝いの行った分で稼ぐようにする方法でもよいですし、定額で1ヶ月分のお小遣いの決まりはあり、インセンティブのように+αを家事手伝いで稼ぐことができるという方法もできます。

それにより、1つのお手伝いに設定する金額は変わってくるかと思います。

子どもも家族の一員だからやるのがあたり前と考え、そこにお金を与えることに抵抗がある親御さんもいらっしゃるかと思います。それも一理あります。

ただ、外で働くことができない子どもに対しては、何もしなくてももらえるお小遣いよりは、家の中で仕事をしたからお金がもらえたということを低年齢の頃から教えていった方がお金の大切さやありがたみ、そのお金をどう使うかなどをしっかり考えることができるようになるのではないかと思います。

ご褒美を適切に使うことで、子どものやる気を引き出し、健全に心が成長することをサポートすることができそうですね。

重要なのは、ご褒美の基準を明確にし、子どもの特性や日常生活に合った方法を見つけることです。

今回ご紹介したポイントを参考に、子どもの自主性と自信を育むご褒美の使い方を実践してみてください。

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