お子さんの集中力についてお悩みではありませんか?
「なんでじっとできないの!」など何度も叱ってしまったりする親御さんも多いことと思います。
いうまでもなく、日常生活や学校生活において、集中力は非常に重要な役割を果たしますし、特に小学生の時期は、脳の成長とともに集中力を効果的に伸ばす絶好の機会です。
今回は、脳の機能の観点から、子どもの集中力を構成している要素をご紹介しつつ、集中力を総合的に高めるための具体的な方法についてご紹介していきます。
脳の機能から見る子どもの集中力
脳の構造や機能を理解することで、子どもの集中力をどのようにサポートできるかを知ることができます。
前頭前野の役割
まずは、集中力において最も重要な部分の、脳の「前頭前野(ぜんとうぜんや)」です。
前頭前野は、思考や計画、問題解決、感情の制御など、高次機能を司る部分です。
この部分がしっかりと働くことで、子どもは一つの課題に集中しやすくなります。
神経伝達物質の役割
集中力に関与する重要な神経伝達物質として、ドーパミンとノルアドレナリンがあります。
ドーパミンはやる気や興奮を高める働きがあり、ノルアドレナリンは注意力を高めます。
これらの物質がバランスよく分泌されることで、集中力が向上します。
こちら。
ドーパミンに関する詳しい記事は脳が若いうちに勉強しておくことのメリット
なお、子どもの脳は非常に柔軟で、環境や経験に応じて変化する「神経可塑性」が高い状態です。
神経可塑性とは、簡単にいうと、脳が新しい情報や経験に反応して、神経回路を再編成し、新しい接続を形成する能力です。
この柔軟性は、特に幼少期に顕著で、適切な刺激や学習経験を与えることで、集中力を含むさまざまな認知機能を強化することができます。
具体的には、「シナプス」と呼ばれる神経細胞同士の接続点が、新しい情報や経験を通じて形成され、既存のシナプスが強化/修正されることで、学習と記憶のプロセスを支えています。
また、特定の技能や知識を繰り返し練習すると、関連する神経回路が強化され、効率的に情報処理が行えるようになります。
以上のように、できるだけ可塑性の高い若い脳の状態の頃にたくさんの刺激を受けることがポイントになることもご理解いただけるかと思います。
大人になって勉強を始めても昔のようには情報を覚えにくいとか定着しにくいと感じるのは、この可塑性のギャップが影響していそうですね。
「じっとできない」理由を考える
例えば、椅子にじっと座って先生の話を聞けないなどの状態のお子さんも多くいらっしゃいます。
例えじっとしていられても(女の子の場合は特に)、実は辛いけど我慢して周囲の状況に適応している場合もあります。
じっとできない/じっとすることが辛い場合、前庭覚と固有受容覚という二つの感覚器官が影響している可能性があります。
この2つの感覚は、五感で知られる「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚」とは異なる、重要な感覚です。
この2つの感覚器官が弱い・あるいは強すぎると、「座りなさい」とか「じっとしていない」と指示をしても、子どもにとっては大変な苦痛になってしまいます。
まずはこの二つの感覚がどのような機能を司っているのかを知り、集中力との関係も以下で見ていきましょう。
前庭覚(Vestibular Sense)
前庭覚は、内耳にある前庭器官で感知される感覚で、私たちのバランス(回転や傾き)、スピードなどを把握するのに役立ちます。
前庭覚がしっかり働くことで、子どもは自分の体の位置を正確に把握し、安定した動作を行うことができます。
以下に、前庭覚の主な機能をご紹介します。
バランスの維持
:前庭覚は頭の位置や動きを感知し、体のバランスを保つ役割をしています。
この前庭覚がきちんと機能することで、座ったり歩いたりする際に安定感が生まれます。
空間認識
:前庭覚は空間の中で自分の位置を認識するために役立ちます。物との距離感や方向感を司っています。
固有受容覚(Proprioceptive Sense)
固有受容覚は、筋肉や関節、腱にある受容器によって感知される感覚で、自分の体の位置や動きを内部から感じ取ることができます。
以下に、固有受容覚の主な機能をご紹介します。
体の位置認識
:固有受容覚は、自分の体がどのような位置にあるかを内部から感じ取ることで、体の動きをコントロールし、正確な動作や姿勢を保つことができます。
力の調整
:固有受容覚は、物を持ったり押したりする際に必要な力を調整し、適切な力加減で動作を行うことができます。
集中力を維持するためには、これらの感覚が正常に働くことが重要です。
以上からわかる通り、前庭覚が安定していると、子どもはバランスを保ちながら安心して座り続けることができ、学びや遊びに集中することができます。
また、固有受容覚が適切に機能していると、子どもは体の位置や動きを正確に把握し、無駄な動きを減らして集中することができるようになります。
発達障害の子どもの感覚の状態
発達障害やグレーゾーンの子どもたちにとって、前庭覚と固有受容覚の機能は特に重要であり、その状態に応じた支援が必要です。
ここでは、発達障害の子どもにおける前庭覚と固有受容覚の状態をご紹介します。
前庭覚の状態
発達障害の子どもたちの中には、前庭覚に関する問題を抱えている場合があります。
過敏である場合と、鈍感である場合のそれぞれについてみてきましょう。
過敏な場合
・バランスが取りにくい:バランスを取るのが難しく、ちょっとした動きでも不安定になります。例えば、歩行中によろけやすい、座っているときに落ち着かないなどがあります。
・乗り物酔いをしやすい:車やブランコなど、揺れる動きに対して過敏で、すぐに酔ったり気分が悪くなったりします。
・回転や速い動きを嫌がる:急な方向転換や回転する遊具を避けたがります。
鈍感な場合
・激しい動きを好む:自分から回転したりジャンプしたりと、強い刺激を求める行動をします。
・動作がぎこちない:日常の動作が不器用で、特に新しい動きを学ぶのが難しいと感じます。
・頻繁に転ぶ:バランスが取りづらいため、転倒することが多いです。
固有受容覚の状態
固有受容覚に関しても、発達障害の子どもたちは過敏または鈍感のどちらか、またはその両方の特徴を示すことがあります。
過敏な場合
・特定の動作に対して過剰な反応:体に触れる動作や他者との接触に対して過敏で、触られるのを嫌がったり、特定の動作が極端に不快に感じたりします。
・動作が慎重すぎる:特定の動作を避けたり、非常に慎重に行動したりします。例えば、階段の上り下りに時間がかかるなど。
鈍感な場合
・強い刺激を好む:重い物を持ったり、強い圧力をかけたりすることを好みます。例えば、重いブランケットを好んだり、自分の体に圧力をかけるような行動をとります。
・不器用な動き:手先の細かい作業が苦手で、不器用な動きをします。例えば、ボタンをかけるのが難しい、鉛筆をうまく握れないなど。
・身体の位置感覚の調整:自分の体がどの位置にあるのかを把握するのが難しく、よく物にぶつかったり、転んだりします。
集中力を高めるための方法
子どもの集中力を高める具体的な方法をいくつか紹介します。
子どもの集中力を高めるために、前頭前野を活性化させる活動と先ほどご紹介した前庭覚・固有受容覚のトレーニングの観点からご紹介していきます。
前頭前野を活性化させる
まずは何より、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動です。
特に睡眠は、脳の回復と情報の整理に重要な役割を果たします。
長時間の学習は集中力を低下させるため、例えばポモドーロ・テクニック(25分の集中と5分の休憩を繰り返す方法)などを取り入れると、集中力を持続させることができます。
運動は脳の血流を増加させ、集中力を高める効果がありますしストレス低減にも効果的です。
学習の前後にストレッチや縄跳びなど軽い運動を取り入れることでも、脳の働きを活性化できます。
以下は、前庭覚や固有受容覚に問題を抱えている場合に、前庭覚と固有受容覚を鍛えるために、家庭でできる簡単なトレーニング方法です。
前庭覚を鍛える
・バランス訓練:バランスボールやトランポリンを使用してバランス感覚を鍛えるトレーニングを行います。
・回転遊具の使用:回転椅子や回転遊具を適度に使うことで、前庭覚を刺激します。ただし、過敏な子どもには注意が必要です。
・スローモーションの動作:ゆっくりとした動きを繰り返し行うことで、前庭覚の過敏さを和らげることができます。
固有受容覚を鍛える
・重い物を持つ活動:重い物を運ぶ、押す、引くといった活動を通じて固有受容覚を刺激します。例えば、重めのブロックを使った遊びや、重いバックパックを持たせるなど。
・手先の訓練:ブロックを組み立てたり、ペンで文字を書く、粘土遊びなどの活動を通じて、固有受容覚が刺激されます。これにより、手先の細かい作業や体全体の協調運動がスムーズに行えるようになります。
・圧力をかける活動:圧力を感じる活動を取り入れます。例えば、圧力をかけるジャケットや重いブランケットを使用するなど。
おわりに
前庭覚と固有受容覚は、子どもたちが学びや遊びに集中するために非常に重要な感覚です。
これらの感覚に問題がある場合、家庭でできる簡単なトレーニングを取り入れて、改善していくことができます。
お子さんが集中力を発揮し、楽しく学び、遊べるように、ぜひ実践してみてください。
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