スマホ時代の子育てQ&A:これだけ知っていれば大丈夫! (1)

現代の子育てにおいて、スマホとどう付き合っていくのかということは、ほとんどの家庭で重要な問題となっています。

子育て支援の現場では、スマホの扱いをめぐっての親子のトラブルは多く相談されるテーマの一つです。

そこで今回は、スマホとの付き合い方について、いくつかの指針や方向をQ&A形式を用いて示していきたいと思います。

この記事を書いた専門家

杉野

杉野 亮介


公認心理師、臨床心理士

教育支援センター、スクールカウンセラーとして教育分野で不登校支援等に携わった後、児童福祉施設で心理士として20年間以上従事。児童虐待を受けた子どもや発達凸凹のある子どもたちへの心理的支援、生活のケアを行う。

子育て支援の現場では、長年にわたって共通するような相談が寄せられることがある一方で、時代の変化に対応して寄せられる相談もあります。

スマホに関する相談は、後者と言えるかもしれません。

対象となる年齢も、就学前から成人まで幅広く、何歳から持たせれば良いのかという質問から、スマホばかりで勉強しない、あるいは仕事に行かなくなったというものまであり、現代の子育てに関わる全ての人において、良くも悪くも、スマホの存在は無視できないものになっています。

スマホ

相談に連れてこられた子どもたちから話を聞くと、「誰にも迷惑かけて無い」「自分のスマホだから、どう使おうが自由じゃないんですか?」という声もありますが、よくよく話を聞いていくと、スマホを使っているというよりも、スマホに振り回されていて、誰も得もしていないし幸せにもなっていないということもよくあり、なかなか深刻な問題だと感じさせられます。

もちろん、スマホをどう使おうが自由ではあるのですが、どうせ使うのであれば、みんなが楽しく幸せになるような使い方をしてもらえたらとは思い、ここからは、現場でよくお聞きする相談や質問を通して、私なりの考えをお伝えしていこうと思います。

なお、私はスマホに関しては専門家でないどころか、どちらかというと、扱いが苦手な人間だと思います。

スマホのセキュリティ的なことに関しては、各通信会社はもちろん、警察関係のサイトでもたくさん情報が出ていますし、最近は学校で講座を開いていたりしますので、そちらを参考にしていただければと思います。


質問1:子どもにスマホを持たせようと思います。我が家なりのルールを作ろうと思いますが、どのようなことに注意したら良いですか。ちなみに、子どもは、スマホはみんな持っていて、自由に使っている子が多いからルールなんていらないと言っています。

回答1:

スマホとの付き合い方において、子どもにスマホを持たせようとしている段階が最も大切な時期だと思い、この質問を1番初めに持ってきました。

子どもがスマホをまだ持っていない段階から、ルールを一緒に考えていくことが非常に大切です。

なぜなら、すでにもう持たせてしまった後からでは、制限をかけにくいからです。

子育て相談の場で、子どもが朝までスマホでゲームをしていますとか、スマホで何万円も課金してしまって等の相談を聞いて、色々と対応策を考えたりするのですが、子どもの手元に既にスマホがあって、親が手出しできない状況になってしまうと、なかなか状況を変えることは難しくなってしまいます。

スマホ

子どもがまだスマホを持っていない段階から、ルールをきちんと話し合って作っていくことは必要です。

この段階であれば、子どももスマホを欲しいという思いがあるので、親の提案を聞いてくれやすい状況ですし、ルールを共有できないのであれば、スマホを持つことは難しいとも言えます。

ルールに関しては、各家庭の考え方や事情もあるので、各家庭ごとに異なるものであって良いと思いますが、スマホを触らない、あるいは触ってはいけない時間帯を設けておくことをお勧めします。

テスト勉強中はリビングに置いておくとか、ご飯中は触らないとか、とにかく、スマホを触らない時間帯を作っておくことが必要だと思います。

その辺りが曖昧になっていると、子どもがずっとスマホを触っているけれど、制限をかけることができないということになってしまいやすいです。

また、ルールに関しては、初めに決めたことが全てではなく、子どもの使い方が良ければ、枠を緩くすることもできるし、反対に、子どもの使い方が心配であればルールを再考するということも約束する必要があります。

できれば、親から一方的に提示するのではなく、親としてはどういうことを心配しているかを伝えた上で、子どもにどういうルールや対応法をとるかを考えてもらうことが大切だと思います。

「誰々の家はそんなルールは無い」「ルールなんて、どこの家も作ってない」と子どもはだいたい言います。

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ルールを設けて欲しくないというのは自然な気持ちなのかもしれません。

しかし、スマホの依存性等を考えると、ある程度ルールを設けておくことが子どもを守ることにもなりますので、私としては、ルールをきちんと設けておくことを勧めています。

なので、よその家にはそんなルールは無いと言われても、「でも、うちには、うちのルールを作ります」と明言すれば良いでしょう。

ここで、普段の親側の行いが試されます。

成績等に関しては、「Aちゃんは国語の点数良かったらしいけど?」「Bちゃんは塾にも行かずに成績優秀なのに」と、自分の子どもをよその子どもと比較していると、子どものことはよその家と比較するくせに、親の都合が悪い時だけはよその家のことは言わないのはおかしい、と子どもから反発を食らってしまいます。

子育てにおいて大切なことの一つに、自他の境界を確保するということがあります。

「私は私、他人は他人」「うちはうち、よそはよそ」と境界線を確保し、他者と比較せずに、本人を評価してあげるということを普段から行っておく必要があります。


質問2:子どもが、ずっとスマホを触っています。聞けば、SNSを介してのメッセージのやりとりをしており、少しでも返信が遅くなると、仲間外れにされるということです。親としては、この状況は異常だと思うのですが、このままにしておいて良いのでしょうか?

回答2:

スマホの使用において、SNSがらみの相談は多いですが、私の実感としてはこのような相談が特に多いように思います。

ここでは、保護者も異常だと感じられているということなので、まずは保護者から子どもに、いつでもすぐに返信が無いと阻害される関係性というのは異常だと思うこと、その関係性が子どもにとって良いとは思えないことを伝える必要があります。

そのような支配的な関係性は、いじめと隣り合わせであることが多いです。

だから、子どもたちは、自分がいじめられる側にならないために、必死でメッセージの流れについていき、お互いの顔色をうかがい続けています。

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このような関係性は異常であること、いじめにつながるリスクが高いこと、等を伝えても、納得して、その関係性を断つことができる子どもはほとんどいません。

そういう場合には、保護者が壁、あるいは悪者になってあげるのも有効です。

「夜は親にスマホを取り上げられた」とか「うちのルールで、22時以降はスマホ回収される」など、親の権限でメッセージのやりとりができない状態を作ってみるという方法があります。


質問3:子どものスマホのルールやマナーが気になります。しかし、親の言うことはうるさがってなかなか聞きません。どのような方法で伝えていくのが良いでしょうか?

回答3:

保護者が子どものスマホのルールやマナーを体現しているという意識を持つことが一番大切だと思います。

「ご飯中にスマホを使わない」というルールを設けても、保護者が使っていれば、なぜ子どもだけ使ってはいけないのかと反発するのは自然なことです。

保護者自身のスマホの使い方が、子どもの求める使い方と一致しているかを、意識して使うことが必要だと言えます。


質問4:子どもがスマホばかり触っています。宿題の時も、ご飯の前も、寝る前も、何度も何度も言って、やっと使うのを止めるという状況です。その都度、お説教をしても状況が変わっているとは言えません。このまま、依存していくのではないかと不安です。何か良い関わり方はありませんか?

回答4:

自分でやめさせるというところに力を入れるのが良いと思います。

このご質問で言えば、何度も言った後で使うのを止めたところで、「偉い」「聞いてくれてありがとう」「自分でやめることができたね」と評価してみましょう。

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どうしても、このタイミングでは褒めるというよりも、叱りたくなりますが、このタイミングで叱ってしまうと、スマホを使い終わったところで叱られるという学習がされてしまって、ますますやめにくくなってしまいます。

自分で止めたというところを評価して、自分でコントロールできたという感覚を積み重ねていくことが必要だと思います。


質問5:今の時代、スマホは生活必需品だと思い、子どもには小さい頃からスマホを持たせようと思いますが、どう思われますか?

質問6:私達の子ども時代にはスマホなんて無くとも、楽しくやってきました。なので、子どもにスマホを持たせる必要はないと思いますが、どう思われますか?

回答5-6:

どちらの話も、よく聞きます。

どちらも、個人的なご意見ですので、自分の考えを尊重されれば良いとは思います。

スマホは何歳までは悪で、何歳からは必要ということは言えませんが、現実的には小学校の高学年ぐらいでは多くの子どもたちが持っている印象がありますし、中学校以上になれば、子ども同士のやりとりは、友達関係はもちろん、部活や習い事の連絡もSNSを介してというのが現状かなと思います。

そう考えると、親の制限が入りやすい、小学生ぐらいから持たせて、使い方を一緒に学んでいくのが良いのかもしれません。

もちろん、スマホを持たせないという考え方も否定はしません。

その場合には、子どもに、なぜスマホを持たせないかということはきちんと話をしてあげる必要はあります。

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これは、私の経験則に過ぎませんが、スマホに限らず、ゲームでも何でもそうだと思いますが、持たせない、やらせないで長期間にわたって我慢を強いることは、あまりお勧めしません。

なぜなら、その制限が解かれた時の反動が大きく出ることが多いからです。

そうなることを予防するためにも、過度に我慢を強いるよりは、親の制限がかかるうちから、一緒に使い方を学ぶということが、どんなことにおいても必要ではないかと思います。


質問7:スマホを持たせるにあたって、セキュリティを設定して、子どもの使用状況を確認できるようにしようと思っています。しかし、子どもは嫌がるので、子どもに内緒で設定しようと思うのですが、こういうのは良くありませんか?

回答7:

良くないと思います。

双方が話し合って納得した上で設定することが必須だと思います。なぜなら、特にスマホに関しては、大人が管理するには限界があると感じるからです。

スマホ等の機器に関して言えば、スキルや知識面に関しては、親よりも子どもの方が詳しいという家庭は珍しくありません。

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学校で配布されたタブレットを使いこなして、セキュリティを外すのか、かいくぐるのかは知りませんが、授業中にゲームを楽しんでいるという生徒がいるという話は、色々なところで聞きます。

大人側がどれだけ制限を加えても、子どもがそれに反発してしまうのであれば、それはよくない形だと思います。

子どものスマホの使用において、親や大人がコントロールするのには限界がありますので、スマホを安全に使っていくには、子どもが自制心を持つことが必要ということです。

そのためには、親や大人が禁止している行為は、なぜダメなのかなどをきちんと話し合って教えてあげる必要があります。

そして、困ったこと等があったら、すぐに親に相談してほしいことを伝えておく必要があります。


質問8:SNSを介してのトラブルが多く起きていますが、親として、そのようなトラブルを予防するような方法はありますか?

回答8:

私はセキュリティ面等の技術的なことは詳しくないので、親子の関係性という側面から述べたいと思います。

SNSを介してのやりとりで、特徴的なところは、見ず知らずの人から承認を得たいという欲求です。

なぜと言うと、大人との愛着関係をある程度構築できている子どもであれば、見ず知らずの人からの承認よりも、現実にいる身近な人からの承認を得たいと思うからです。

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そう考えると、子どもがSNSの見ず知らずの人に走る前に、保護者や周囲の大人が、子どもとの関係性を構築し、その子の自己承認欲求を満たしてあげることが必要だと思います。

スマホの中のやりとりよりも、現実の人とのやりとりの方が楽しいと思える経験を積み重ねることも大切でしょう。

スマホというテーマでしたので、スマホに特化した親子の関係性などが出てくるかなとも思っていましたが、これまでの話の中心は、大人と子どもとの現実的なやりとりの重要性についてでした。

これは、実は初めから意識していたことではなく、書き終わって見直してみたら、そうなったという感じで、自分でも意外なところでした。

ただ、子育て相談の現場での経験を振り返ってみると、それは自然なことだと感じています。

スマホに関する相談に来られた方のことを思い出すと、スマホが悪者で、スマホさえなければ、この親子は平和に仲良く暮らせたのに、ということはほとんどありません。

何らかの要因で、親子の力関係のバランスが崩れてしまったり、歪んでしまったりしていて、そのひずみが、たまたまスマホとの付き合い方がうまくいかないという形で表現されていることがほとんどでした。

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スマホとの付き合い方がうまくいかないという形を通して、家族関係や自分の生き方等を見直しなさいよというサインが出ているのは、他の色々な子育てをめぐる問題となんら変わらないようです。

もし、家族の中で、スマホとの付き合い方がうまくいかないという状況が見られた場合には、少し落ち着いて、家族、ないし自分の在り方を見直されても良いのかもしれません。

スマホとの付き合い方につまづいた時には、どうしても、スマホをどう扱っていくかということに目が向いてしまいます。

しかし、スマホもゲームも面白いけど、それが生活の全てになってしまわないためには、「友だちとサッカーするのが楽しいな」、「お友だちと一緒にお菓子を食べて話すのが楽しい」、「家族で旅行するのは楽しい」、などの現実生活での体験を充実させることも大切ではないでしょうか。