親の子どもへの学習への関与は、その質と量によって、子どもの発達に異なる影響を及ぼします。
適切な関与は子どもの学業成績を向上させ、自立心や問題解決能力を育みますが、過度な干渉は逆効果となることがあります。
重要なのは、子どもの自主性を尊重しつつ、必要なサポートを提供するバランスを見つけることです。
本記事では、子どもの学びに親が関わる場合の効果や、関わり方の違いによる影響をご紹介します。
親の関与による学びへのマイナス影響
もちろん、多くの研究が、親が子どもの学習に積極的に関与することが学業成績の向上につながることを示していますし、親の期待が高いほど、子どもの学業成績が高くなることが報告されていたりもします(William H. Jeynes 2007)。
一方で、親の関与が過度になると、子どもは学習に対する圧力を感じ、ストレスや不安を抱えることになります(Pomerantz et al., 2005)。
この状況は、自主性の低下や内発的動機付けの欠如につながりかねません。
また、過度な支援は子どもの依存性を高め、自立した学習能力の発達を妨げる可能性があることも示唆した研究もあります。
また、親の養育スタイルに関して、寛容度が低く要求が過剰な親から育てられた子どもは、社会的スキルの発達に悪影響があり、反抗的な行動や自尊心の問題を引き起こす可能性があることや、自己主張が弱く、学業成績にも問題を抱えやすいこともわかっています。
以下では、具体的な親の関与による、子どもの学びへのマイナス影響についてご紹介します。
子どもの主体性を奪う
子ども(というか人間全て)は本来、「学ぶのって楽しい!」という生き物です。
子どもが、自らの学びに対して主体的であることが、学ぶという行為の中でも非常に重要です。自分自身で何を学びたいか、何を知りたいかを発見して(=学習目標を設定し)、その好奇心を満たせるものを探します(=学習目標の達成に向けて積極的に取り組みます)。
このプロセスは、自己管理能力や問題解決能力の発達にも大きく影響します。
親がすべての学習活動を管理したりすることで、子どもがこれらの重要なスキルを獲得する機会を奪うことになりかねません。
また、現代の教育環境は、テクノロジーの進展や教育理論の発展により、過去のものとは大きく異なります。
世代間の観点で親と子どもの間で学習方法や学習内容に違いがあるのは自然なことです。
親が自分の学習経験をそのまま子どもに適用しようとすることはよくあるのですが、それは非常に非効率的で、子どもの学習スタイルにはフィットせずに学習を苦痛に感じる可能性もあります。
親も、子どもの学習を管理することは心身ともにしんどいと思います。子どもの学びに向かう力を信じて任せてみるのも良いかもしれません。
創造性を抑制する
子どもたちが、大人が思い付かないようなギョッとするような色使いで絵を書いたり、びっくりするような空想の動物の話をしてきたことはありませんか?
子どもたちの想像力と独創性は無限大ですよね。
これには、子どもの脳が成長と発達の過程にあり非常に可塑性が高く新しい経験や学習が神経回路に直接影響を与えやすかったり、子どもたちは大人よりも右脳(創造性や直感、感情を処理するのに関与している場所)を活発に使うというようなことも影響しています。
当然、子どもたちは、この溢れんばかりの創造性を学びの過程でも発揮します。
いろんなことを想像したり、新しいアイデアを思いつきます。
子どもが自由に知りたいことを探究し、試行錯誤する機会を持つことは、創造性を育む上で欠かせません。
方法や解決策を親が提示し続けると、子どもが自分自身で考え、創り出す機会が制限されます。
親がどの程度細かくやり方を指示するかでももちろん異なりますが、今日はこれを勉強しよう、この方法でやりましょう、と限られた枠組みで学び方を導いてしまうと、それが正解であるかのように認識され、子どもたちの創造性が制限されてしまうのです。
子どもに任せて大丈夫!
子どもが自分の学習に責任を持つことは、自立心の発達にもつながります。
親が適切なサポートを提供しつつも、学習の責任を信頼して子ども自身に委ねることで、子どもは自分の行動や学習成果に対して自己責任を持つようになります。
信じられると、押し付けられるより真剣に取り組むようになるというのは、私たち大人にも当てはまることですね。
これを示した最も有名な研究の一つに、ロバート・ローゼンタールとレノア・ジェイコブソンによる1968年の「ピグマリオン効果」があります。
この研究では、教師が生徒の能力に対して持つ期待や信頼が、実際の生徒の学業成績に影響を及ぼすことが示されました。
教師が高い能力を持っていると信じている生徒は、実際に学業成績が向上する傾向にあることが分かったのです。
この原理は「自己成就予言」とも呼ばれ、教育の分野だけでなく、やはり一般的な人間関係や職場など、さまざまな状況においても観察されます。
親が子どもの学業に関して肯定的な期待や信頼を持つと、その期待や信頼は子どもの自尊心、動機付け、そして最終的な成績に肯定的な影響を与える可能性があるとされています。
親が子どもに対して持つ高い信頼感は、子どもが自分自身についてより肯定的な見方をするように促し、学習に対する取り組みや努力を高めることができます。
まとめ
親の関与を適切なバランスにすることで、子どもは自分で学習する方法を見つけ出し、自立性を育む機会が増えますし、自分で学習内容を理解し課題に取り組む過程で、子どもは問題解決能力を養うでしょう。
先に親が子どもの現実のニーズや感情を理解し、子どもの能力を信じ、適切にサポートして導いていくことが重要だとお伝えしましたが、どの水準が”適切”かわからないと思います。
究極的には、子どもが試行錯誤して取り組んでいるように、大人も試行錯誤しながら見守ったり関わったりしていけば良いのです。
良い成績を取ったり受験に合格したりすることも学習目標として必要な場合もあると思いますし、多くの子どもは自己抑制の力も発達段階のため、親が必要なガイダンスをしなければならないタイミングも多いです。
その中でも、どのようなバランスがお互いに快適か、本質的には何を一緒に達成しなければならないか、一度話し合ってみることも有意義だと思います。
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